治療・予防

増加する子どもの近視
~低年齢の発症予防が鍵(東京都立広尾病院 五十嵐多恵医長)~

 裸眼視力1.0未満の子どもの割合が増えている。その多くが近視によるものだ。日本眼科医会は子どもの近視予防の啓発動画を制作して、学校や家庭でのデジタル端末の適正使用と屋外活動の重要性を訴えている。「特に大切なのは、就学前の低年齢で近視を発症させない点です」と東京都立広尾病院(東京都渋谷区)眼科の五十嵐多恵医長は指摘する。

近視の進行を防ぐデジタル端末の使い方

 ◇外遊びが近視を予防

 近視の主原因は体質と環境。環境的要因で特に影響が大きいのが、目と近い距離で行う作業と、外遊びの減少だ。

 「デジタル端末を使った動画視聴やゲームだけでなく、読書や書き物を目と近い距離で行っていると、眼球の前後が伸びて近視が進みます」

 近視は一度発症すると進行を止めるのが難しい。特に6歳以下での発症は、10歳代で発症するより進行が早い。「発症からわずか2~3年で強度近視に至るケースもあります。低年齢の子どもほど、近視の発症予防に有効な生活習慣を積極的に取り入れましょう」

 近視の抑制効果で注目されるのが屋外活動だ。長時間の手元の作業による視力への悪影響を打ち消すとされ、手元の作業時間が長くても、屋外活動の時間も長い子どもは近視になりにくいという。「台湾では1日2時間以上の屋外活動を国の政策として推進し、体育の授業や休み時間を利用して週150分、屋外活動の時間を設けることを義務化しています。近視を発症させないためにも、幼少期こそ外遊びの時間を大切にしてください」

 ◇30分に1回休息を

 近年の研究で、近視が将来、緑内障や白内障、網膜剥離など目の病気にかかるリスクを高める原因になると分かってきた。

 一方で、デジタル端末を用いた教育の導入が進み、子どもが画面を見ながら手元で作業する機会はさらに増えている。「問題は端末の使い方です。姿勢を正して、目と画面の距離を30センチ以上離し、30分に1回は画面から視線を外して20秒以上遠くを見る習慣をつけましょう」

 携帯ゲームや動画は魅力的で、無意識に長時間利用しやすい。海外では子どものデジタル端末の使用時間を制限する動きもある。「スマホの使用時間を制限する機能や、画面との距離、休息の注意を促すアプリを親が設定して、管理するのも一案です。また、タブレットをテレビなどに接続し、目と画面の距離を空けて大画面で見るだけでも、近視の進行を防げます」と五十嵐医長は助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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