話題

目のかゆみ、「1日1回」まぶたに塗るだけ
~アレルギー性結膜炎にクリーム~

 花粉症と言えば、1月半ばごろからのスギ花粉飛来で毎年悩まされるという人が多いが、9~10月にヨモギやブタクサといった秋特有の花粉によって発症する人もいる。鼻水やくしゃみの他、目のかゆみも困った症状。まぶたに1日1回、塗ることで、かゆみを抑えられる薬が今年登場した。花粉症のシーズンを迎える前に押さえておきたいポイントは「かゆみが出る前に塗ることだ」という。

 ◇国民の半数が症状

 日本眼科学会による2017年の調査では、目のかゆみや充血などアレルギー性結膜疾患の国内有病率は48.7%。国民の約半数に何らかの目に関する症状があった。

 そのうち特に多いのが、花粉やダニなどを抗原とする季節性アレルギー性結膜炎、次に季節関係なく一年中症状が続く通年性アレルギー性結膜炎だ。

 アレルギー性結膜炎は、抗原が目の中に入ると特定の抗体が反応することで起こる、かゆみや充血などのこと。

アレルギー性結膜炎における初期療法の重要性を説く海老原伸行医師

 順天堂大学医学部付属浦安病院眼科教授で、日本眼科アレルギー学会理事長の海老原伸行医師は「アレルギーの患者は一つの抗原だけでなく、さまざまな抗原に反応する人が多く、年々増えている」と指摘する。

 こうした患者にアンケート調査をした結果、幾つかの症状のうち、目のかゆみが日常生活において最も支障を来していることが分かった。また、患者は治療によって「かゆみを軽くする」ではなく「かゆみを無くす」ことを望んでいることも明らかに。海老原医師は「かゆみを無くす点眼薬や投与法が必要と感じた」と、新薬剤開発が進んだ背景の一つとして挙げる。

 ◇かゆくない時も使ってほしいが

 今までどのような治療が行われてきたか。一般的には、アレルギー反応を抑える抗アレルギー点眼薬が処方される。問題は、薬を患者自身がどのように使っていたかだ。

 例えば、点眼薬の処方箋に「1日4回」と書かれていたとする。「いつ」点眼するかが書かれておらず、患者はかゆみを感じてから差す。そうなると、かゆみを感じなかった日は「1日4回」が守られていなかった。

「かゆみ止め治療からかゆみを感じさせない治療が必要」と話す高村悦子医師

 高村悦子医師(元東京女子医科大学眼科教授)は「患者さんはかゆみを感じて初めて受診したり、かゆいから薬を使ったり。これは『かゆみ止めの治療』で、かゆみを起こさない治療とは言えなかったのでは」と話す。抗アレルギー点眼薬は、対症療法ではない。

 海老原医師は、同点眼薬の治療で大事なのは「初期療法」と説く。花粉飛散が予測される2~3週間前、または症状が少しでも表れた時点から点眼すれば、発症を遅らせたり、飛散ピーク時の症状を軽減したりする。ただ、症状が無い時に「1日4回」を守れるのか。

 ◇効果の持続性長いクリーム治療薬

 高村医師も「あらかじめ点眼」と患者に説明し、症状が出る前からの治療、そして薬の用法順守の説明に気を付けている。結膜内の薬物の濃度が維持されるよう、効果の持続を考えて、何時に差せばいいか処方時に指導する。

 今回参天製薬などが開発したアレルギー性結膜炎治療薬「アレジオン眼瞼クリーム」は効能が長く、1日1回で済む。「就寝時など、塗る時間を定めやすく忘れにくい」と高村医師は評価する。

アレルギー性結膜炎のクリームタイプ治療薬「アレジオン眼瞼クリーム0.5%」

 「点眼」が「塗布」に変わったことも大きな違いだ。同社眼科事業部の前眼部チームマネジャー、佐野裕介さんは「点眼が怖い幼児や児童、病気で手元が不自由な方、高齢者にも向いた剤形」と話す。発売して約4カ月経過し「子どもに嫌がられずに使えた」といった保護者からの声も届き、手応えを感じている。

 同疾患でクリームタイプの治療薬は世界初。まぶたを通して結膜に成分が移動するメカニズムで、点眼薬のように流れ出ること無く患部に有効成分を届ける。

 また、「1日1回」はアレルギー性鼻炎の内服薬にも多く、さまざまな症状を持つ患者でも混乱せずに薬を使えそうだ。

 アレルギー炎症は、一度起こると、少ない抗原でも症状が出る特徴がある。「アレルギー性結膜炎は、まず初期療法。花粉症の患者さんは花粉の飛散が始まったら『かゆくなる前に薬を使う』ことを意識して」と高村医師。その習慣が1日1回なら忘れずに済む。そして続けることが大切だ。(柴崎裕加)

【関連記事】

新着トピックス