現代社会にメス~外科医が識者に問う

世界各国で導入が進む「クオータ制」
“努力義務”で先送りする政治家の本音 ジャーナリスト長野智子さんに聞く(下)

 日本は女性国会議員、女性管理職などの意思決定層の比率が諸外国の中でも非常に低いことが課題となってきた。近年、一定数を女性に割り当てる「クオータ制」が注目されている。130以上の国が国会議員に採用し、多くの国が女性国会議員比率を30〜40%台にアップさせ、世界のスタンダードになりつつある。*1

 日本の国会議員の女性比率はまだ10%台と世界的に最低の水準にあり、1980年に女性の議員比率が同じレベルであった国に大きく後れを取っている。女性国会議員が増えると何が変わるのか。クオータ制を導入すべきなのか。多様性が確保された社会の実現に向けて、現職国会議員と共に「クオータ制実現のための勉強会」を主宰する、ジャーナリストの長野智子さんに聞いた。

2024年内閣府男女共同参画局資料より

 ◇女性視点での社会課題の裾野が広がる

 河野 日本では政治は男性の仕事といった風潮があるのですが、女性が政治に参画することでどんなメリットがあるのでしょうか。

長野智子さん

 長野 女性政治家が増えることによる社会全体へのメリットを検証したリポート*2があります。それによると、「議論の場に女性が参加する、すなわち議会の構成員に多様性があることは、多様な政策立案につながる」、さらに、女性の国会議員は国会審議において、「雇用・就職」「震災復興・防災」「教育・子育て」といった有権者にとって身近な政策争点について高い頻度で言及しています。一方、男性議員は「景気対策」「外交・安全保障」「産業政策」を重視する傾向にあります。また女性議員は「防衛費や農業・企業等への補助金の削減圧力の傾向があり、結果的に支出削減もあるという」としています。

 以前、女性議員が、ある男性議員から「女性は既得権益を持たないことで扱いづらい」と言われたというのを聞いたこともあります。米国の州議会においては、女性議員の方が男性議員よりも法案提出件数、法律成立件数がいずれも多いという調査結果*3もあり、日本でも女性議員が増えれば、より生活に密着した多様な視点や当事者としての視点が加わり、社会課題の裾野が広がるのではないでしょうか。

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