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症状がなくても保湿、トラブル起こさない肌に 乾燥肌とかゆみにしっかりケア

 気温の低い日が増え、空気が乾いてくると、皮膚も乾燥しやすい。この季節、専門医は乾燥肌による「かゆみ」の相談で受診する人が増えると指摘する。ケアを怠ると、乾燥だけでなく他の刺激にも過敏に反応し、かいてしまうことで荒れが強まり、余計にかゆくなる「かゆみサイクル」を起こしてしまうことも。どうすればいいのか。

バリア機能が低下し乾燥した肌はかゆみを感じやすくなる

 ◇乾燥肌が引き起こすかゆみ

 皮膚は、外側から表皮、真皮、皮下組織などに分かれている。表皮の外側は、何層もの角質細胞が積み重なった構造をしていて「角層」と呼ばれる。

 角質細胞の隙間は「角質細胞間脂質」という脂質が埋まっていて、細胞同士を接着すると同時に水分を保持する役割をしている。細胞内には、天然保湿因子とケラチンが存在し、潤いを保っている。一番外側の、汗と皮脂が混ざり合ってできた薄い膜「皮脂膜」が、皮膚表面をコーティングしている。

 この角層が、外部の刺激から体を守り、体内から水分が失われるのを防ぐバリアの働きをしている。

 冬は水分が蒸発しやすく、角層の水分も逃げてしまい、カサカサの乾燥肌になりがちだ。皮脂や天然保湿因子、細胞をつないでいた脂質も減少して積み重なった構造が崩れ、バリア機能が低下すると、せっけんの使用や衣服とのちょっとした摩擦などが、かゆみを感じる神経を刺激し、かゆみを引き起こしてしまう。

高山かおる医師

 ◇お風呂の一工夫で乾燥とかゆみ防ぐ

 済生会川口総合病院皮膚科主任部長の高山かおる医師は「入浴後や就寝時にかゆみを訴える患者が多い」と話す。すね、臀部(でんぶ)、肩や腕の付け根など、皮脂腺や汗腺が少ないとみられる部位について相談が多く、実際に乾燥肌を起こしているという。

 原因は①体温が上昇し血流が良くなると、かゆみを引き起こす物質が放出される②布団や衣類との摩擦③入浴時にゴシゴシこすり洗いをして、表皮に傷が付く④皮脂が洗い落とされ欠乏状態⑤外気が乾燥し水分が蒸発しやすい―などだ。

 これらは入浴前後の工夫で対策することができる。まず、湯の温度を38~40度の低めに設定する。高温だと必要な皮脂が奪われる上、急激な体温上昇でかゆみ成分が発現する。ボディーソープをたくさん使い過ぎたり、すすぎ残したりすると、乾燥を助長させるので注意が必要だ。ナイロンタオルやブラシなどでゴシゴシせず、手で泡立て優しく洗う。

 入浴後は直後でなくてもいいが、保湿剤を塗る。チクチクしない、刺激の少ない素材の寝間着や寝具を使う。

かゆみの悪循環

 ◇保湿しっかりで「かゆみサイクル」回さない

 乾燥肌を放置し「かゆいからかく」を繰り返すとどうなるか。

 「水分が失われると同時に皮膚のバリア機能が低下し、炎症を引き起こすと、少しの刺激でかゆみ神経が反応し、ますますかゆくなる悪循環『かゆみサイクル』が回り始める」と高山医師。

 肌がカサカサしてきたな、といった軽い症状で済んでいるタイミングなら、まずは市販の保湿剤でケア。軟こう、クリーム、ローションなど、剤形はさまざまだが、選ぶポイントについて「想像以上にたっぷり使うので経済的に続けられ、使い心地が良く、塗り広げやすい製品を選ぶといい」(同医師)。

 成分は、保湿力が強いセラミド含有がおすすめだ。ガサガサ感が強ければビタミンE、A、尿素などが入っているものもある。

 日本皮膚科学会が提唱する保湿剤の量は、1回当たりの塗布量の目安として、軟こうだったら成人の人さし指の第1関節分(1FTU=finger-tip unit)が両手のひらの面積に相当する。ローションの場合は手のひらにだいたい一円玉大。片方の腕分で3FTU、背中だと7FTUなどと言われている。 

 かゆみ止めの薬には注意が必要だ。冷感作用があるメントールや、局所麻酔作用のあるリドカインなどが含まれているものは、皮膚のかぶれの原因になることも。

 ステロイド剤を使用する際は、薬剤の強弱などを薬剤師と相談して購入し、1週間以上使い続けないことに留意する。高山医師は「塗ってすぐ治るのならいいが、塗り続けても改善しない場合は受診してください」。誤った使用を続けると、バリア機能をより弱めたり、免疫を低下させたりする恐れもある。必ず保湿剤と併用することが重要だ。

 ◇保湿を習慣にしよう

 自宅でケアをしてみたが、よくならない場合、どうするか。高山医師は「ブツブツする、じくじくする、赤み、かき過ぎて傷だらけ、カサカサして皮がたくさんむける、などの症状が表れたら皮膚科医に見せた方がいい」とアドバイスする。かゆみで夜眠れない、途中で目が覚めてしまうなど、睡眠に支障を来した場合も、早めに受診してほしいという。

 治療では、医療用保湿剤とステロイド外用薬、かゆみ成分を抑える内服の抗ヒスタミン薬などが処方される。用法用量を守り適切に使用すれば、2週間ほどで軽快するというが、高山医師は「油断すると再発するので、冬の間は気を付けることが大切。トラブルを起こさないためには、保湿を習慣化することが大事」と呼び掛ける。

 洗濯物を室内に干したり、暖房の風が直接当たらないように設定したり、部屋の乾燥を防ぐのもいい。少し工夫すれば、乾燥肌とかゆみに悩まないで済みそうだ。(柴崎裕加)


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