インタビュー

コンタクトレンズのリスク=使用誤れば障害も-井上智子医師

 装着のしやすさからコンタクトレンズの普及に一役買ったソフトコンタクトレンズ。進学や就職などを機会にコンタクトレンズにしようという若い人たちを中心にユーザーを増やし、本来の視力矯正に加えてイメージを良くするためのファッションとしても使われるようになった。しかし、落とし穴もある。眼球に直接触れるだけに、不適切な管理や使用が原因で、角膜の損傷や眼球内の感染症などを引き起こすことも少なくないからだ。

 そんな事態を避けるためには、使用前に医師による適切なレンズの選択や使用法の指導が必要だ。30年以上にわたってコンタクトレンズ専門外来を運営しているお茶の水・井上眼科クリニック(東京都千代田区)の同外来で診察する井上智子医師に、コンタクトレンズとの正しい付き合い方を聞いた。

 ◇医師が処方する医療機器

 「眼球の形は人それぞれに微妙に違い、どのメーカーの、どのタイプのレンズが一番フィットするか見極めるには、眼科医による判断が必要だ。実際、自分では問題ないと思っていても、よりフィットしたレンズに変えると『見え方が全然違う』と喜ぶ患者さんもいる」

 レンズが眼球の大きさやカーブにフィットしていないと、まばたいたり、視線を動かしたりする時にレンズが眼球の動きをうまく追随できず、見え方が悪くなる。さらに、使い続けるうちにまぶたの裏側の結膜や眼球表面の角膜を傷つけ、視力障害を招く危険もあるという。

 井上医師は「コンタクトレンズは繊細な眼球に直接触れる高度管理医療機器。本来は医師の処方に基づいて使用し、定期的な検診を受けるべきだ。大切な自分の目を守るために、ぜひ眼科医の指導を受けて使ってほしい」と強調する。

 ◇結膜炎、角膜炎の危険も

 コンタクトレンズの使用に当たりまず重要なのは、あまり長時間は装用しないことだ。1日最長12時間程度を目安にしたい。脱着時には清潔にした指でレンズを扱い、外した後は衛生的な環境でレンズを保管する。

 しかし、使用開始時に十分な説明を受けないユーザーの中には、こうした基本を守らない人も少なくない。その結果、さまざまなコンタクトレンズによる障害を引き起こし、眼科を受診しなければならなくなる。

 「1日ごとに使い捨てるレンズはよいとして、2週間、1カ月などの期間で使い続けるタイプは、就寝時に外してケースで翌朝まで保管する必要がある。その際に雑菌などが付着しないように洗浄液でこすり洗いした後、定期的に交換した専用ケースに殺菌性のある専用保存液を入れて保管すること」

 井上医師は「コンタクトレンズをはめたまま寝てしまったり、外したレンズを洗わずに水道水を満たしたケースに入れたりしてしまう。また、1日使い捨てのタイプを数日使い続けるなど、使用期間の制限を無視して使い続ける人もいる。そうすると、アレルギー性の炎症や細菌感染を起こして結膜炎や角膜炎を発病する恐れがある」と指摘する。

 ◇カラーレンズは慎重に

 このような患者を厳しく指導すると、若い世代を中心に治療を受けなくなる傾向もあるとの指摘があり、専門医が集まる日本コンタクトレンズ学会でも話題になった。しかし、井上医師は「一度結膜炎や角膜炎を起こすと、再発しやすくなる傾向がある。繰り返し発症すれば、角膜や結膜に重篤な後遺症を残すこともあり、高齢になった時に視力障害に悩まされることも考えられる」と憂慮する。

 「自分の目なのだから」と丁寧に説明し、時にはレンズの使用を中断して眼鏡に切り替えるように勧めるなど、眼科医の適切な指導は欠かせない。

 井上医師が特に気にしているのが、瞳の色を金色などに変えたり、さまざまな模様を瞳の上に浮かび上がらせたりするファッション目的のカラーコンタクトレンズだ。視力矯正の必要のない人向けに度がないレンズもあり、雑貨店などでも購入できる。

 「レンズの裏側に模様や色素が露出しているものもあり、接触する角膜を傷つけたり色素が浸透してしまったりした事例もある」と井上医師。これらのレンズの購入者は20代までの若者が大半を占め、デザインの奇抜さや色の多彩さで選ばれる上、低価格の商品が好まれる傾向にある。

 一方、視力矯正用レンズに比べ品質管理や使用者への情報提供のレベルもばらばら、といわれる。井上医師は「デザインやカラーの面では種類が少ないが、眼科では信頼できる品質のレンズを処方している。カラーコンタクトレンズを使おうと思ったら、眼科を受診し、相談してほしい」と呼び掛けている。

(喜多壮太郎)

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