治療・予防 2025/05/21 05:00
市民による救命活動
~バイスタンダーの役割(千葉市立海浜病院 本間洋輔統括部長)~
肥満に悩む人は少なくない。遺伝などを含めて要因はさまざまだが、「自己管理の問題」と捉える偏見や差別も存在し、事態の改善を妨げている面がある。そんな中、新たな肥満症治療薬の販売が始まり、医療関係者からは期待する声も出ている。
◇国内2800万人が肥満
肥満に分類されるのは体格指数(BMI)が25以上の場合だ。一方、肥満症はBMIが25以上で、2型糖尿病など肥満に伴う11の合併症のいずれかがある場合を指し、治療の対象になる。肥満の人は世界で約25億人、国内には約2800万人いると推計され、中高年を中心に肥満が多い。
秋田大大学院医学系研究科の脇裕典教授
虚血性心疾患や脳血管障害、慢性腎臓病など肥満関連疾患の割合も上昇しており、BMIが30以上40未満の場合、標準的な体形に比べて男性は死亡リスクが1.36倍、女性は1.37倍に上がるという調査結果もある。
◇「自己責任」意識強く
肥満や肥満症は、遺伝や環境、心理社会的背景、食習慣などさまざまな要因が複合的に絡み合っている。秋田大大学院医学系研究科の脇裕典教授は「肥満は要因がたくさんあるにもかかわらず、食習慣など自己管理の問題ではないかという意識が職場や教育現場だけではなく、医療現場においても存在する」と指摘する。こうした差別・偏見は「オベシティ・スティグマ」と呼ばれ、患者や肥満の人自身も「自己責任でこうなっているのかと考えがちと言われている」(脇氏)。
日本イーライリリーと田辺三菱製薬が肥満症患者や医師、一般生活者を対象に行った意識調査では、患者の87%、医師の64%、一般生活者の70%が肥満は「本人の責任」と回答。患者の約3人に2人(63%)は「100%本人の責任」との回答だった。
体重について医療機関で気軽に相談できるかどうか尋ねたところ、医師、患者ともに約半数が「できなかった」と回答。その理由について、医師の47%が「患者が相談するのは恥ずかしいから」、患者の45%が「体重管理は医師の仕事ではなく、本人の責任」と答えた。他に「自己管理不足などと医師に否定されるのが怖い」「無意味だと感じる」などの回答もあった。
肥満症治療の必要性については、患者の78%、医師の87%、一般生活者の69%が「治療が必要」としたが、保険で治療が積極的に行われることについては一般生活者の約半数が「好ましいと思わない」か「どちらともいえない」と答えた。
海外のデータでは、体重や肥満に悩み始めてから医療従事者に相談するまでの期間の中央値は約3年で、相談しない理由については「体重管理は自己管理の問題だから」との回答もあった。医療従事者が積極的に関与してくれると減量に対するモチベーションが約2.3倍上がるという調査結果もある。脇教授は「オベシティ・スティグマは適切な治療の機会も奪ってしまう可能性がある」と警鐘を鳴らす。
日本肥満学会は治療の減量目標を体重の3%、高度肥満者の場合は5~10%としている。脇教授は「3%減少すれば、例えば2型糖尿病や脂質異常症のような代謝疾患はかなり顕著に良くなっている」と話す。
肥満症の治療は食事や運動、行動療法による生活習慣の改善が基本で、これらの効果が不十分な場合、治療食の強化や薬物療法などのステップに進む。脇教授によると、生活習慣への介入だけで体重減少を維持するのはなかなか難しい。高度肥満症を中心に外科療法も有効な選択肢だが、限られた人にしか適用できないのが課題の一つだ。そこで「薬物療法がその間をつなぐ重要なものとして出てきている」(脇氏)。
(2025/05/12 05:00)
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