慢性特発性蕁麻疹(CSU)は、明らかな原因がないにもかかわらず6週間以上にわたり膨疹や血管浮腫を繰り返す疾患である。治療の第一選択はヒスタミンH1受容体拮抗薬(H1拮抗薬)だが、十分な反応が得られないH1拮抗薬抵抗性CSUが一定数存在する。中国・Tianjin Academy of Traditional Chinese Medicine Affiliated HospitalのZuotao Zhao氏らは、H1拮抗薬抵抗性CSUに対する薬剤および用量の有効性・安全性を包括的に比較するシステマチックレビューとネットワークメタ解析を実施し、その結果をClin Transl Allergy 2025; 15: e70052)に発表した(関連記事「慢性特発性蕁麻疹で死亡リスクが最大2倍に」「抗IgE抗体が慢性特発性蕁麻疹に最も有効」)。

RCT 23件・6,933例で検討

 Zhao氏らは、PubMed、EMBASE、Web of Science、Cochrane Libraryに2024年3月25日までに収載され、H1拮抗薬抵抗性CSUに対する生物学的製剤および分子標的薬の有効性と安全性を検討したランダム化比較試験(RCT)を検索。薬剤26種類のRCT 23件・6,933例を組み入れた。

 有効性の評価指標には1週間当たりの蕁麻疹活動性スコア(UAS7:1日の膨疹の数と瘙痒の程度を0~42点で点数化、高スコアほど重症)を採用。主要評価項目はUAS7のベースラインからの変化、完全奏効(UAS7=0)および良好なコントロール状態(UAS7≦6)の達成率とした。安全性は有害事象、重篤な有害事象について評価した。

UAS7が最も改善したのはligelizumab 120mg

 検討の結果、プラセボと比べUAS7の改善度が最も高かったのは、抗IgE抗体ligelizumab 120mgの4週間隔皮下投与で、平均差(MD)は-10.01(95%CI -11.89~-8.18)だった。次いで抗IgE抗体オマリズマブ 300mgの4週間隔皮下投与の-9.99(同-11.31~-8.80)、BTK阻害薬fenebrutinib 200mgの1日2回投与-8.23(同-12.99~-3.15)の順だった。

 BTK阻害薬remibrutinibも複数用量で有効性が示され、MDは35mgの1日1回投与で-7.80(95%CI -12.76~-2.51)、25mgの1日2回投与で-7.69(同-9.85~-5.76)、10mgの1日2回投与で-7.61(同-12.59~-2.47)だった。BTK阻害薬rilzabrutinib 400mgの1日3回投与、抗IL-4/13受容体抗体デュピルマブ300mgの2週間隔皮下投与、抗TSLP抗体テゼペルマブ210mgの4週間隔皮下投与もプラセボと比べ、ベースラインからの有意な改善が認められた。

 完全奏効(UAS7=0)の達成率はオマリズマブ300mgの4週間隔皮下投与が最も高く〔オッズ比(OR)7.11、95%CI 4.28~19.40〕、次いでremibrutinib 25mg 1日2回投与(同4.46、2.10~9.99)だった。他にプラセボとの有意差が認められた薬剤はなかった。

 良好なコントロール状態の達成率も、オマリズマブ300mgの4週間隔皮下投与が最も高く(OR 7.41、95%CI 5.15~10.90)、同薬150mgの4週間隔皮下投与(同4.72、3.13~7.12)、fenebrutinib 200mgの1日2回投与(同4.09、1.43~11.40)、remibrutinib 25mgの1日2回投与(同3.32、2.25~4.95)もプラセボとの有意差が示された。

有害事象の頻度はベンラリズマブ60mgで最も低い

 有害事象の頻度は、抗IL-5受容体α抗体ベンラリズマブ60mgの4週間隔皮下投与が最も低く(OR 0.86、95%CI 0.31~2.26)、次いでremibrutinib 10gの1日2回投与(同0.91、0.37~2.23)、同25mgの1日2回投与(同1.10、0.71~1.75)だったが、いずれもプラセボとの有意差はなかった。

 一方、ligelizumab 120mgの4週間隔投与(OR 1.73、95%CI 1.13~2.67)、同72mgの4週間隔投与(同1.58、1.04~2.33)、オマリズマブ300mgの4週間隔投与(同1.50、1.12~1.93)は、プラセボと比較して有意に高い頻度で有害事象が発現していた。

 有効性と安全性の順位付けを行うため累積順位曲線下面積(SUCRA)を検討したところ、有効性と安全性の両方において最適な薬剤は見つからなかったが、remibrutinibは総合的に高いパフォーマンスを示していた。

 Zhao氏らは、「抗H1拮抗薬抵抗性のCSU患者に対し、オマリズマブ300mgとremibrutinib 35mgの1日1回投与、25mgの1日2回投与、10mgの1日2回の投与が推奨されることを示している」と結論。「今後は、実薬対照群を直接比較するhead-to-head試験や長期安全性試験の実施、費用効果の観点から、さらなる検証が求められる」と付言している。

編集部・栗原裕美