CDIメディカル医療インサイト

(第7回)変わりゆく大学病院の「今」
知られざる苦悩と危機感

 大学病院と他の病院との大きな違いは何か。建物の大きさや医療スタッフの人数、手術件数、ブランド力。「○○先生が○○大学病院にはいる」という名声も、その一つかもしれない。ある時には階級社会との意味合いを込めて「白い巨塔」と言われ、またある時には医療水準の高さから「最後のとりで」とも称される大学病院は、さまざまな苦悩を抱えながらも大きく変わりつつある。神戸大学医学部附属病院の院長を務め、現在は同大学理事副学長の杉村和朗先生にそんな変わりつつある大学病院の「今」を聞いた。

杉村和朗・神戸大学理事副学長

 --大学病院が診療だけではなく、教育や研究も担っていることは一般の方々にあまり知られていないように思います。診療だけでも多忙を極める中で、教育や研究の現場はどのようになっているのでしょうか。

 杉村    一昔前の大学病院というのは、正直良いイメージはなかったと思います。建物は古くさく、スタッフの対応も悪く、どんな治療をされるのかもわかったもんじゃない…。そんな印象があったのではないでしょうか。

 ところが、独立行政法人化以降大きく変わりました。患者さんへの対応はもちろんのこと、学生への教育の姿勢に至るまで本当にさまざまな点で意識改革がありました。その成果は、病院ランキングの評価指標で各地域の大学病院の位置づけが向上していることからも分かると思います。

 ◇押し寄せる患者

 ただ、必ずしも良い点ばかりではなく、地域の患者さんがこぞって大学病院に押し寄せるという結果にもつながってしまいました。実際に神戸大学病院では、1日に2千人を超える患者さんが外来診療に訪れている状況です。

 厚生労働省の定めによる、紹介状を持たない患者さんへの初診時選定療養費(追加負担)を1万円に設定しても大学病院で受診したいという患者さんが後を絶ちません。

神戸大学医学部附属病院

 ゆえに、以前にも増して教育や研究に時間を割くことが難しくなってしまいました。それだけでなく、近年大学は国際化や地域貢献への取り組みも求められています。本来であればそこを補うはずの国からの運営費交付金は減少傾向にあり、かつ研究費も限られています。診療や教育、研究のどれもが中途半端になる危機感を抱いています。

 一般の方々には、大学病院は高度医療を手掛ける医療機関だということをぜひ理解していただければと思います。そういう意味では、治験に対しても前向きに検討、参加してもらえればと思います。治験と聞くと、「えっ、人体実験ですか」という患者さんもいるのですが、甲乙つけがたい良い成績を残している二つの治療方法に対してさらに比較研究をする治験もあります。

 一般の方々にそうした理解を深めていただくことも大学病院やそこで勤務する医師の負担軽減につながります。

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