CDIメディカル医療インサイト

(第7回)変わりゆく大学病院の「今」
知られざる苦悩と危機感

 ◇ガバナンスの強化

 --ますます複雑化する医療に対して、これからの病院や医師に求められる機能や資質はどの様なものになっていくのでしょうか。

 杉村    おのおの異なるとは思いますが、大学病院で言えば「ガバナンス」の強化は必要不可欠です。一昔前のように医療スタッフが好き勝手、わがままを言いながら患者さんを診るわけにはいきません。

 機能分化も重要とは思うのですが、一筋縄で行くものではありません。大半の患者さんはすぐに手術しなくては命が危ないという類のものではなく、じっくりと話を聞いてしかるべき処置が求められているということで言えば、もう少し違ったアプローチ方法もあるのではないかと考えつつあります。

 体制的な仕組み、データ構築が肝要とも思いますので、引き続きそうした点からも兵庫県の医療を守っていきたいと考えています。

 --これからの兵庫県の医療には高い関心を寄せています。また、全国のロールモデルとなり得ると思っています。本日はありがとうございました。

 杉村    ありがとうございました。

 ◆大学(大学病院)が実践する「学習する組織」

 厳しい事業環境のなか、自らをしなやかに変化させ、さまざまな課題に対して異なる組織とともに解決を図っていく適応性というものは、もはや旧態依然とした「大学」のイメージとは大きく異なります。「知の拠点」でもある「大学(大学病院)」が自ら変化し、課題解決を図る姿は、MIT(マサチューセッツ工科大学)の経営学者、ピーター・センゲが提唱した「学習する組織」そのものの気が致します。医療機関だけではなく一般企業においてもこうした大学の姿から学ぶ点は多いのではないでしょうか。(CDIメディカル・宇賀慎一郎)

杉村和朗(すぎむら・かずろう) 神戸大学理事副学長。1953年兵庫県生まれ。77年神戸大卒。米国UCSF留学を経て、98年神戸大教授、2007年同大病院長、14年同大学長補佐(先端医療担当)、地域医療活性化センター長、15年同大理事。日本医学放射線学会理事長など要職を歴任。北米放射線学会・ドイツ放射線学会・欧州放射線学会名誉会員。

宇賀慎一郎(うが・しんいちろう) 株式会社CDIメディカル最高執行責任者。関西外国語大学外国語学部卒、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科修了(MBA)、ボストン・サイエンティフィック ジャパン、ジョンソン・エンド・ジョンソンを経て現在に至る。
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