CDIメディカル医療インサイト

(第7回)変わりゆく大学病院の「今」
知られざる苦悩と危機感

 ◇三位一体の取り組み

 --患者さんとの接点以外にも厳しい側面は多いと思いますが。
 杉村    まさにその通りで、消費増税に対しては本当に頭を悩ませます。医薬材料、機器などの購入で課税となるものの、収入は非課税のため結果的に増税分は全て病院の持ち出し、負担増となってしまいます。1%の増税で数億円規模の負担を強いられます。

 大学病院の仕組みは一度崩壊すると立て直すのに相当の時間とパワーが必要となります。研修医制度がその最たる例ではないでしょうか。

 かつて医局制度が崩壊した際、全国各地で医師の偏在化が問題となりました。それに便乗する形で著しく高額な紹介料で医師をあっせんする民間事業者も台頭し、一部の地域では信じられない高額報酬でしか医師が来ない状況にまで陥ってしまいました。

 こうした状況は決して健全な医療体制だったとは思えません。是正するのにも大変な労力を要しました。

 ◇市民病院の統合を推進

杉村和朗・神戸大学理事副学長(左)と宇賀慎一郎・CDIメディカル最高執行責任者
 --国内の人口減少は避けられるものではなく、病院数や病床数の見直しは必要不可欠に思います。兵庫県は特にその点への取り組みが円滑に進んでいるように思います。要因はどの辺りにあるのでしょうか。

 杉村    神戸大学医学部の前身が県立神戸医学校ということもあり、兵庫県との関係は非常に良い点があります。大学側の再編案(病院数や病床数の見直し案)に行政が理解を示し、一緒になって推し進めることができたのが成功要因です。

 大学と行政が一緒になって推し進めた最初の事例は、三木市と小野市の関係病院の統合でした。当時は住民の反対や議会の反発などさまざまな課題がありましたが、大学や県と密にコミュニケーションを重ね、今のままでは良い医療を提供できなくなってしまうと判断した市長の意思決定はまさに英断だったと思います。

 そのおかげで現在では以前にも増して充実した医療スタッフが最新の設備環境でベストな医療を提供しています。この後に続く加古川市民病院と神鋼加古川病院、兵庫県立姫路循環器病センターと製鉄記念広畑病院の合併への後押しとなったと思います。

 当時、他の自治体ではかたくなに統合に反対するところもあったのですが、そうした病院では医師が少なくなり、十分な医療を住民に提供できていない状況を見ると、意思決定をされた自治体に改めて感謝致します。

 兵庫県という「地の利」があったとは思いますが、県や各市町村が大学と一緒に進めてきた「団結力」こそが成功要因だったと思います。


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