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高齢者に対し「虚弱」や「老衰」という言葉はイメージが悪い。そこで日本老年医学会が「フレイル」という用語を提唱してから、4年半がたった。しかし、この言葉は医療現場でどこまで浸透しているのか。日本臨床内科医会がこのほど所属会員を対象に行ったアンケート調査によると、フレイルという概念の意義を評価する一方で、「一般的にはなじみがない」とする否定的な声もあった。
フレイルを意識しているか
厚生労働省研究班の報告書によると、フレイルは「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能など)が低下し、複数の慢性疾患などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱(ぜいじゃく)性が出現した状態」を指す一方で、「適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」としている。
◇日常診療で9割意識
アンケートではまず、日常診療においてフレイルを意識しているかどうかを尋ねた。「大いに意識している」は34.6%、「ある程度意識している」は59.2%。「意識していない」は6.0%だった。「大いに意識している」と「ある値度意識している」を合わせると90%を超えた。
自由回答では、「以前のメタボリックシンドロームと同様に、普及、啓発を図るべきだ」とフレイルという言葉の普及を求める意見や、「脳血管障害、認知症に続いて要介護状態を引き起こすにしては、世間の注目はいま一つだ。『フレイル検診』のようなものを創設してはどうか」という提案があった。
概念は浸透しているか
◇「老衰」でもよい
次に、フレイルという概念がかかりつけ医に浸透しているかを聞いたところ、「大いにしている」5.5%、「ある程度している」が62.4%だったのに対し、「あまりしていない」が30.7%、「全くしていない」は1.2%だった。約3人に1人が、フレイルが浸透していないと感じていることが分かった。「浸透していない」とする理由を自由回答から見ると、次のような意見が目立った。
「日本語で十分意味の通じる語句がある。わざわざカタカナにしなくてもよい」
「まだまだ一般的には浸透していない病名と考える」
「老衰が的確な言葉だと思う」
「フレイルは現在、医学用語的で難しく、なじみにくい言葉だ」
「虚弱、老衰を差別用語と考えてフレイルに置き換えたならばナンセンス。余計、本質が分かりづらくなった」
医療現場の率直な思いがうかがえた。
概念の意義について
◇85%が意義認める
かかりつけ医にとって、フレイルという概念は意義があるのだろうか。「大いに意義がある」39.9%、「ある程度の意義はある」45.3%、「少しは意義がある」12.1%、「ほとんど意義はない」2.5%だった。程度の差こそあれ、約85%が「意義がある」と考えていた。
「高齢者の病態を理解する上で大切な概念だ」
「虚弱という概念は以前からあった。これをフレイルと英文化することで新たに意義を高める効果がある。高齢者診療には必要だ」
「口腔フレイルという概念と同時に話をすることにより意義がある」
予防的介入について
◇早期介入、必要性と困難さ
フレイルと診断したときに通常の医学的介入に加えて何らかの予防的介入を行っているのか。「基本的に行う」が18.9%、「必要に応じて行う」64.4%、「行っていない」が10.2%、「フレイルと診断することがほとんどない」は6.4%だった。
「患者の栄養状態や認知機能などを考慮した診療が重要。そのための概念としてフレイル診断は有用だ」
「予防医学的には、健康保持のために遅ればせながらも早期介入がまだ可能な状態。積極的な関わりが大切だと考え、診療している」
日常生活の質(ADL)を低下させないようにするため予防的介入に取り組むとする意見と同時に、医療現場での困難さを指摘する声もあった。
「医学的にフレイルに対処することは難しい」
「いろいろな人生が背景にあってそういう状態になった。患者一人ひとりの状態を考慮した対応が必要で、フレイルとして一括して対応するのは現実的ではない」
◇診療報酬は不十分
介護保険の予防給付(要支援者に対する給付)についてはどうか。「全く不十分」14.7%、「どちらかといえば不十分」60.7%、「どちらかといえば満足」8.0%、「満足できる」2.2%、「わからない」14.1%。4人に3人が「不十分」と回答した。
これに関して「患者のフレイルに介入する意義は大いにあると思われる。だが、現状の診療報酬体系ではそれを行う余地がとてもない」という不満や、「フレイルを意識して指導しても、診療上保険点数には影響がない。もう少し点数が上がるようになるとよい」と要望する声が寄せられた。(鈴木豊)
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