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「ピル飲むと太る」って本当?
~婦人科医が教えるうわさの真相~
ピルは避妊をはじめ多くの効果が見込める薬ですが、「飲むと太る」「将来妊娠できなくなる」といったうわさを耳にし、不安を抱いている女性も少なくありません。きょうは、そんなうわさを検証。診察室でよく聞く質問を基に、医学的な根拠と日常生活での実感をバランスよく伝えます。婦人科医が真相に迫ります!

「ピルを飲むと太る」はうそ(イメージ画像)
そもそも低用量ピルにはさまざまな種類があり、それぞれ適応症状が異なります。服用の主な理由は以下の四つです。
1. 避妊:最も一般的な理由。正しく服用すれば99%以上の避妊効果があります。
2. 月経前症候群(PMS)の治療:イライラ、頭痛、むくみなどの不快な症状を軽減します。
3. 生理不順の改善:ホルモンバランスを整えることで、生理周期を安定させます。
4. ニキビ・肌荒れの改善:男性ホルモンの作用を抑制し、肌の状態を改善します。
◇女性ホルモンに似た成分配合
低用量ピルには、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という2種類の女性ホルモンに似た成分が配合されています。これらが体内の自然なホルモンバランスに作用し、排卵を抑えたり、子宮内膜の状態を変化させたりします。
低用量ピルにも種類があり、トリキュラー、ラベルフィーユ、ファボワールは主に避妊を目的に使用され、プラノバールは機能性子宮出血や月経困難症の治療などに用いられます。それぞれ特徴が異なるため、これまでの服用経験や体調、使用目的に合わせて、医師と共に適切な種類を選ぶことが大切です。
◇検証①:「飲むと太る?」
多くの女性が心配するこのうわさ。結論から言うと、「ピルの服用と体重増加には因果関係がない」ことが研究で分かっています。「でも、友達がピルを飲み始めて太ったと言っていた」。そう思う方もいるでしょう。なぜそのような印象があるのでしょうか。理由は主に二つあります。
1. 一時的なむくみ:ピルに含まれる黄体ホルモンには、体内の水分を保持する作用があり、むくみを感じることがあります。体重はやや増えますが、脂肪が増えるわけではありません。
2. 食欲の増加:黄体ホルモンには食欲を増進させる作用もあります。生理前に食欲が増すのと同じ現象です。
これらの変化は一時的であり、多くの場合、体に慣れてくると落ち着いてきます。また、ピルの種類によっても影響の度合いは異なります。むくみが気になる場合は、塩分控えめの食事や適度な運動を心掛けるとよいでしょう。
◇検証②:「将来妊娠しづらい?」
これも大きな誤解です。低用量ピルを長期間服用しても、将来の妊娠能力には影響しません。ピルは排卵を一時的に抑制する薬で、妊娠する機能そのものを損なうことはありません。いわば、卵巣を一時的に休ませている状態です。
服用をやめれば、ほとんどの方は1〜3カ月で自然な生理周期と排卵が回復します。中には、すぐに排卵が再開し、ピルを中止した翌月に妊娠する方もいます。子宮内膜症や子宮筋腫などの疾患がある場合、ピルでそれらの進行を抑えることで、将来の妊娠に良い影響を与える可能性もあります。

低用量ピルにはニキビを改善する効果がある(イメージ画像)
◇検証③:「ニキビができる?」
実は逆です。低用量ピルにはニキビを改善する効果があることが分かっています。ニキビの原因の一つは男性ホルモンの作用です。低用量ピルはこの作用を抑えて皮脂の分泌を減らし、ニキビを改善します。
ただし、服用開始直後はホルモンバランスの変化によって一時的にニキビができることもあります。体が新しいホルモンバランスに適応する過程での反応で、多くの場合2〜3カ月で落ち着きます。
もし3カ月以上たっても改善しない場合は、違う種類のピルへの変更を検討する必要があるかもしれません。一人で悩まず、処方医に相談してください。
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(2025/03/26 05:00)