治療・予防

顔や頭にふけ、かゆみ
~生活の乱れやストレスが影響―脂漏性皮膚炎~

 皮膚ががさがさになり、ふけと赤みが生じてかゆみを伴う。胸や背中のみならず、頭部や顔で起きると外見への影響も大きく、外出もままならなくなる人も少なくない。多くは「脂漏(しろう)性皮膚炎」と呼ばれる皮膚病で、適切な治療を受ければ早期の改善が期待できる。

顔面に広がる脂漏性皮膚炎 (野村皮膚科医院提供)

 ◇原因は皮膚にいるカビ

 皮膚疾患に詳しい野村皮膚科医院(横浜市)の野村有子(のむら・ゆうこ)院長は「脂漏性皮膚炎の発症原因は、皮膚に常在するマラセチアというカビの一種と考えられています。これが皮脂を栄養源として異常増殖して皮膚組織に炎症を起こしたことで発生します」と説明。食生活の乱れや睡眠不足、ストレスなどが影響し、主に皮脂の分泌が多い頭皮や顔面、胸や背中の中央部分などで発症することが多いという。

 ◇乳児型と成人型

 野村院長によると、この皮膚炎には乳児期に見られる「乳児型」と、思春期以降の成人に見られる「成人型」の2種類がある。このうち、乳児型は生後2カ月から1歳ころまでに起き、顔や頭皮に黄色いかさぶたが付着し、脂臭いにおいを伴うこともある。

 一方、成人型は、発症すると患部は赤みを帯びて湿ったり、乾燥したうろこ状になったふけが生じたりする。顔では、髪の毛の生え際や眉毛、眉間,小鼻の横、あごなどによく起きるが、耳の中に発症することもある。また、頭皮に起きると皮膚がはがれ落ち、ふけのように見える。症状が悪化すると、患部がかゆくなることもある。

 乳幼児の場合、顔や頭に黄色いかさぶたがあるのに気付いた保護者が「洗ってもなかなか取れない」と言って受診する場合が多い。成人では、頭や顔にふけのようなかさつき、かゆみなどが生じ、患部に保湿などの対策をしてもなかなか改善しないために受診する患者が多いという。正しい病名を知っている人はほとんどなく、かゆみに対して炎症を抑えようと、ステロイド外用薬を何度も使って症状を悪化させてしまうことも珍しくない。

 ◇診断は鑑別が要に

 医療機関を受診した場合は、皮膚の実際の症状とその分布から診断する。ただ、似たような症状を示す病気も多い。このため、接触皮膚炎や尋常性乾癬(かんせん)、エリテマトーデスなどの膠原(こうげん)病などとの鑑別が重要になる。発症後の経過や全身症状などから診断する。

野村有子院長

 実際の治療には、抗真菌薬やステロイド薬の塗り薬が中心になる。また、洗顔や洗髪により過剰な皮脂を落とし、その後に適切な保湿用品でスキンケアを行うことも大切。かゆみがある場合は、かゆみを抑える抗ヒスタミン内服薬も使われる。さらに、症状に応じてビタミン剤や漢方薬の内服が加わる。通院は2週間から4週間に1回程度。1カ月から数カ月の治療が必要となることが多いという。

 ◇体調のバロメーターの一面も

 予防には規則正しい生活が重要になる。夜更かしや食生活の乱れ、ストレスは悪化要因になる。脂漏性皮膚炎が急に悪化してきた場合、野村院長は患者に必ず「お疲れではないですか」と声を掛けているという。また、治療でいったん症状が改善しても、悪化要因が重なると再燃することも多い。「体調のバロメーターとも言えると思います。症状が出たら生活を見直してください」と同院長はアドバイスしている。(喜多壮太郎)

【関連記事】

新着トピックス