治療・予防 2024/12/23 05:00
薬物療法が大きく進歩
~ぼうこうなどの尿路上皮がん(虎の門病院 三浦裕司部長)~
がんが骨に転移すると、痛み、骨折、まひなどを生じるため、患者の生活の質(QOL)が大きく損なわれる。前立腺がんは骨に転移しやすいがんの一つだが、近年、治療の選択肢が広がってきた。佐藤威文前立腺クリニック(東京都町田市)の佐藤威文院長は「がんの骨転移の治療法は進歩しています。特に前立腺がんの骨転移の治療法は、従来の痛みの緩和を目的とした治療から延命を狙える治療へと流れが変わってきています」と話す。
進行がんで骨転移が起きる頻度と前立腺がんの骨転移の主な症状
▽QOLが低下
がんが進行し、がん細胞が増殖すると、血流に乗って他の臓器に移動し、そこで増殖を始める。この病態を転移という。骨は肝臓や脳と共にがんが転移しやすい部位の一つで、進行がんの多くで骨転移が見られる。
急速に患者数が増加している前立腺がんは、乳がんや肺がん、多発性骨髄腫などと共に骨に転移しやすいがんの一つ。2017年の推定罹患(りかん)数は8万6100人で、男性のがんでは3位と予測されている。
進行した患者では65~75%が背骨や肋骨(ろっこつ)、骨盤などに転移を有しているが、「5年生存率は50%を超え、他のがんと比べて生命予後が良いのが特徴です」と佐藤院長。骨転移は腰痛や背部痛などから見つかることもあるが、複数の生体マーカーや画像診断技術の発展により、近年は早期に発見されるケースが増えている。
▽延命を望める薬
骨転移した前立腺がんの治療では、痛みの軽減や骨折発症の抑制を目的に、デノスマブやゾレドロン酸のほか、放射性医薬品のストロンチウム89という薬が使われてきた。
そこへ、16年に新たな選択肢として加わったのが、放射性医薬品の「ラジウム223」だ。佐藤医師は「放射線を放射して骨転移のがん病巣を直接攻撃する薬です。従来の骨転移治療薬では延命は望めませんでしたが、ラジウム223は臨床試験で、未使用のグループに比べて3.6カ月の延命効果が得られています」と説明する。
前立腺がんが進行した場合、がん細胞を増殖させる男性ホルモンの働きを抑えるホルモン療法が行われる。だが、いずれ効かなくなり、この状態を去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)という。ラジウム223はCRPC患者を対象とした薬だ。
佐藤院長は「前立腺がんの骨転移に対しては、さまざまな治療を組み合わせることで、患者さんがQOLを保ちながら、日常生活を長く送れるようになっています。新しい選択肢があることを知り、希望を持って治療に臨んでいただきたい」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/02/11 05:55)
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