多発性骨髄腫〔たはつせいこつずいしゅ〕 家庭の医学

 からだの免疫機能の中心をなす抗体と呼ばれるたんぱく質である免疫グロブリンは、Bリンパ球が成熟分化した形質細胞からつくられます。多発性骨髄腫は、この形質細胞がおもに骨髄で腫瘍化し異常に増殖する病気です。異常な形質細胞が同じ種類の免疫グロブリン(Mたんぱくと呼ばれます)を異常に産生することで、さまざまな臓器障害が引き起こされます。高齢者に多く、発症のピークは60~70歳代です。40歳代未満での発症はきわめてまれです。まれに骨髄以外の部位で形質細胞が腫瘤をつくることもあります。
 腫瘍の増殖速度はおそいことが多く、病気の進行はゆっくりで、尿や血液検査で偶然にMたんぱくが発見されることで診断され、無症状でしばらくの間経過することも少なくありません。骨破壊が進行しやすくなることが知られており、病気が進むとわずかな外力が加わっても骨が折れやすくなったり(病的骨折)、骨が溶けることで高カルシウム血症が引き起こされたりすることがあります。また、Mたんぱくが沈着するために腎臓のはたらきが低下したり、貧血が進行したり、感染症にかかりやすくなったりします。

[治療]
 治療は抗がん薬を組み合わせた治療がおこなわれます。年齢などによっては自家末梢血幹細胞移植をおこなうこともあります。以前からメルファランや副腎皮質ステロイドが治療に使われてきましたが、その後、さまざまな分子標的治療薬が開発され、ボルテゾミブやレナリドミド、ダラツムマブをはじめとする新たな薬剤が広く使用されるようになりました。これらの治療の進歩により、以前にくらべて治療成績が改善しました。ただし、現状でも完全に治癒することは多くはありません。さまざまな合併症を予防・治療しながら病勢をコントロールすることも重要と考えられています。
 骨折が起こった場合、整形外科医と協力して治療にあたります。骨の吸収(骨からカルシウムが溶け出すこと)を抑制し、骨痛などを防ぐ目的でビスフォスフォネート製剤がよく使われます。

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