一流に学ぶ 天皇陛下の執刀医―天野篤氏

(第23回) 「医師目指す動機付けを」 =高校生対象、体験プログラム

 「夏の5週間、毎週月火水の午前中から午後3時まで、僕と医局員が夏休み返上で高校生に付き合います。患者のために真面目に働き、トラブルがあっても立ち直れる医師を育てられるんだったら、その労力なんて高が知れています」
 実際の手術を見るだけでなく、術後のリハビリにも立ち会い、医局員の回診に付き添って患者のベッドサイドを訪問するなど、心臓外科医の仕事を肌で感じられるような内容だ。最終日には院長室で天野氏が全体の総括を行い、プログラムを終える。
 「参加してくれる高校生は、医師として患者に貢献したいという思いが強い子が多いですが、このプログラムへの参加で、その思いが確固たるものになれば」と願っている。
 天野氏がこの体験プログラムをスタートさせた背景には、天皇陛下の執刀医としての体験があったという。「ご自身のことは何も主張されず、常に国民のこと、公務のことばかり考えていらっしゃる姿に触れ、自分ももっと周囲の人のために役に立ちたいと考えるようになりました。自分だけが良ければいいという社会になり過ぎていると思います。義理人情を大切にする『寅さん』みたいな人間を増やさないと駄目だと。ささやかな抵抗ですよ」

(ジャーナリスト・中山あゆみ)


→〔最終回へ進む〕過去より未来、高み目指す=多忙や病気も前向きに

←〔第22回へ戻る〕埼玉知事選に出馬要請=3日間「その気」に

  • 1
  • 2

一流に学ぶ 天皇陛下の執刀医―天野篤氏