一流に学ぶ 天皇陛下の執刀医―天野篤氏

(最終回) 過去より未来、高み目指す =多忙や病気も前向きに

 2002年に順天堂大学医学部の心臓血管外科教授に就任して以来、通勤に使う時間とエネルギーがもったいないから、月~金曜日まで病院に泊まり込み、教授室のソファで寝る生活を続けているという。16年4月に順天堂医院の病院長に就任してからも、朝5時に起床、バナナと缶コーヒーと野菜ジュースだけの朝食を取って、メールや書類に目を通し、会議に手術にとフル回転する。昼は会議で弁当が出ることもあるが、ポテトチップスなどのスナック菓子をつまむだけのことも多い。
 「ちゃんとしたベッドで寝ると、かえって休めなかったりします。睡眠は4時間ぐらい。ときどき疲れていることもあるので、寝過ごさないように、いつもと違う目覚ましをかけて仮眠することがあります」と天野氏。「違う音で起こされると、寿命の鐘が鳴ったような錯覚を起こすことがあります。身体は金縛りになったみたいに動かないし、自分はもしかしたら死んじゃったんじゃないかと。目が覚めて、あ、生きてたって」
 天野氏は病院での仕事を終え、夕方に教授室に戻るが、部屋の前の廊下には、面会の約束をした人たちが順番を待つ。朝から立て続けに手術3件を執刀した後に取材を受けるなど、多忙な毎日を送っている。
 「10年ぐらい前、60歳を過ぎると緊急手術や長時間の手術は嫌になるだろうなと思っていましたが、そんなことはなかったですね。体は十分動くし目も見える。視力の衰えを理由に引退する外科医は多いのですが、僕の場合は多重焦点コンタクトレンズで解決しています」

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