こちら診察室 めまい・耳鳴り

周囲や自分がグルグル回る
~嘔吐も伴う回転性めまい~ 第3回

 周囲や自分自身がグルグルと回転しているように感じられる「回転性めまい」の多くは、内耳にある前庭神経や蝸牛(かぎゅう)、三半規管などの異常により起こります。めまいが起きている時間は短いと数秒から数分、長ければ数時間から数日にわたります。このような回転性めまいが起きたときに吐き気嘔吐(おうと)を生じることがあり、自律神経が関与します。

回転性めまいで、さまざまな科を受診することがある

 ◇寝耳に水!

 これは特殊な現象ではありません。驚きを表現する言葉に「寝耳に水」というものがありますが、実際に耳に水が入ると、内耳の三半規管内にあるリンパ液が対流を起こし、誰にでも回転性めまいと同様の症状が起きるのです。回転性めまいは、天井などがグルグルと回ってしまうように感じてしまうもので、ひどくなると立っていられなくなります。他にも、目をつぶって10回ほど回転したり、遊園地のコーヒーカップなどと呼ばれる回転式遊具に乗ったりした際にも起きることがあります。つまり、誰でも、どこでも、回転性めまいを体感することができるのです。だからといって、耳に水を入れることは禁物です。これは、耳鼻科で内耳の機能を診察するれっきとした検査であり、専門の医師による医療行為だからです。

 ◇三つの症状

 実際に、このような回転性めまいが起きたらどうなるでしょうか。症状ははっきりしています。めまいが起きれば、誰でも驚き、めまいが落ち着くのを待って病院に駆け込むでしょう。

 内耳が原因で起きる回転性めまいは具体的に、「耳石(カルシウムの小さな粒)」が関与する良性発作性頭位めまい症、「内耳の浮腫=水膨れ」が関与するメニエール病、「前庭神経=内耳神経」の炎症が関与する前庭神経炎の三つになります。

 ◇不安から逃れられない

 回転性めまいではよく、こんな事例を耳にします。ある日の朝、目が覚めたら突然、回転性めまいが起き、嘔吐があり、発作がなかなか治まらなかった。意識はしっかりしていて、しびれや手足のまひもない。脳の病気が心配になり、脳外科を受診し、頭のCTあるいはMRIを撮ったら、結果は「異常なし」。「耳から来るめまいだろうから耳鼻科へ行きなさい」と言われたので、耳鼻科を受診していろいろな検査を受け、「メニエール病ではなさそうだし、良性発作性頭位めまい症でもなさそうだ」と医師に説明された上で、薬を処方されて「しばらく様子を見ましょう」と言われたというものです。

 この人の場合はその後、嘔吐するところまではいかないものの、めまいが治まる気配は一向にありませんでした。最近は、ストレスや睡眠不足が重なり、再びめまいが起きるかと思うと不安で仕方ない。医師に訴えても、「心療内科に相談したらどうでしょうか」と言われました。精神安定剤の服用が追加されましたが、いつまでたっても、めまいの不安から逃れられません。

 この回転性めまいは耳からきたのでしょうか。回転性めまいの多くは耳からですが、一部は脳血管障害によるものもあり、画像検査には全く異常がないのです。(了)

 坂田英明(さかた・ひであき)
 川越耳科学クリニック院長、埼玉医科大客員教授。元目白大学教授。日本耳鼻咽喉学会専門医、日本聴覚医学会代議員。日本小児耳鼻咽喉学会評議員。
 1988年埼玉医科大卒、91年帝京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科助手、2005年目白大教授、15年より現職。小児難聴や耳鳴りなどの治療に積極的に取り組み、著書多数。近著に「フワフワするめまい食事でよくなる」(マキノ出版)。

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