こちら診察室 めまい・耳鳴り

水と食事でめまい改善
~自律神経のバランス保つ~ 第2回

 「体がフラフラする」「足元がフワフワする」などといった、いわゆる「浮動性のめまい」の原因はいろいろあります。医師が最初に疑うのは体の平衡感覚をつかさどる内耳の異常ですが、問題はそこにはなく、ほとんどが自律神経の乱れによることが多くあります。自律神経の乱れの最大の要因は不規則な生活によるストレスです。つまり、ストレスを解消することが浮動性のめまいを改善へと導く道になります。ストレスを解消し、自律神経のバランスを整えるために役立つのが、毎日取る3回の食事と水なのです。

体温変化は正常=難聴の79歳女性

体温変化は正常=難聴の79歳女性

 ◇「体内時計」を大切に

 私たち人間の体には、体温やホルモンの分泌など体の基本的な機能が24時間周期のリズム(サーカディアンリズム)を刻む「体内時計」が備わっています。この体内時計のリズムによって、人間の体温は起床直後から徐々に上昇し、午後2時ごろにピークに達します。そこから少しずつ低下し、睡眠時に最も低くなるように設定されています。このようなリズムになれば、自律神経のバランスが安定し、浮動性のめまいも改善することができるのです。

 では、体温が理想的な上昇と下降を繰り返すためにはどうしたらいいのでしょうか。大切なのは、人間が生きていくために必要不可欠な食事と水によって「腸内時計」、特に小腸をリセットすることです。これによって、多くの浮動性めまいの患者さんを治癒に導いていけるのです。

 食事の基本6カ条

 浮動性めまいを改善する具体的な食事とは、いったいどんなものでしょうか。その基本となる6カ条は以下の通りです。

 ① 朝起きたらすぐにコップ1杯のさゆを飲む。

 ② 朝食では体を温める食材を取る。

 ③ 昼食は軽くし、80~100グラムの糖質を取る。

 ④ おやつにコップ1杯の常温の蜂蜜レモン水を飲む。

 ⑤ 夕食では体を冷やす食材を取る。

 ⑥ 寝る前にコップ1杯の冷たい水を飲む。

 効果的な食事の指標となるのは「体温」です。起床直後から体温が徐々に上昇し、午後2時あたりにピークに達し、そこから徐々に下がっていき、睡眠時に最も低くなるような食事が基本です。それを目指してください。そのために1日数回、起床直後、昼すぎの2時ごろ、就寝前に体温を計測しておくといいでしょう。

 ◇「やる気ホルモン」

 朝、起床したら、すぐに37度前後のさゆを飲みましょう。体を温めるのと同時に、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の小腸からの分泌を促す効果があります。副腎皮質ホルモンは別名「やる気ホルモン」とも呼ばれ、人間が活動する上で欠かすことができないホルモンです。この分泌が減ると、だるさや倦怠(けんたい)感、不眠、頭痛めまいなどさまざまな症状を引き起こしてしまいます。

 朝、さゆを飲むことを2週間ほど続けると、副腎皮質ホルモンの分泌が徐々に向上します。体温と同じように午後2時ごろにピークに達し、それ以降は夜の休息に向けて徐々に分泌が減少していきます。これにより、自律神経のうち緊張時に優位になる交感神経とリラックス時に優位になる副交感神経のバランスが整い、浮動性めまいを改善へと導くことが可能となります。

体温が昼に低下する=47歳女性、めまい・耳鳴りがある

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 ◇朝・昼・夕の食べ方は

 朝食は、体を温める食材(温熱性)としてゴボウやニンジン、ショウガ、山芋などの根菜類、寒い地方で取れたサケやイクラ、納豆やみそ、ぬか漬けなどの発酵食品があり、これらと共に、適度な炭水化物やたんぱく質、塩分を取るようにするといいでしょう。午後2時ごろに副腎皮質ホルモンの分泌をピークに導くため、昼食は、ご飯やパン類などを中心に糖質を意識して取ってください。夕食は、体を冷やす食材(寒涼性)としてキャベツやレタス、白菜、ホウレンソウ、トマト、キュウリ、大根などのほか、暑い地方で取れた果物やエビ、カニ、ホタテなどの甲殻類を積極的に取ってほしいと思います。

 ◇就寝前に1杯の冷たい水

 就寝前のコップ1杯の冷たい水も大切です。脳梗塞を発症するのは明け方の5~8時が圧倒的に多いというデータがあります。寝ている間に200~400ミリリットルの汗をかき、脱水状態になる可能性が高いためです。重篤な病気を避ける意味でも、浮動性めまいを改善させるためにも、寝る前のコップ1杯の冷たい水を忘れずに。

 こうしたちょっとした知識や工夫で、自律神経が整い、浮動性めまいを自力で改善させることが可能なのです。(了)

 坂田英明(さかた・ひであき)
 川越耳科学クリニック院長、埼玉医科大客員教授。元目白大学教授。日本耳鼻咽喉学会専門医、日本聴覚医学会代議員。日本小児耳鼻咽喉学会評議員。
 1988年埼玉医科大卒、91年帝京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科助手、2005年目白大教授、15年より現職。小児難聴や耳鳴りなどの治療に積極的に取り組み、著書多数。近著に「フワフワするめまい食事でよくなる」(マキノ出版)。

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