地震への対応 家庭の医学

 地震発生時に身を守る方法は次のとおりです。まずは火を消して、ガスの元栓を閉め火災発生を予防します。次に、ヘルメットやクッションなどで頭部を保護しておきましょう。

■屋内にいた場合
 家屋の耐震性が低いと、家屋の倒壊によるけが、最悪の場合は圧死してしまいます。このため家屋の耐震性を診断してもらい、必要な補強をしておきます。家具の転倒防止や什器(じゅうき)類の落下防止対策も大切です。
 地震によって家屋が倒壊する危険性は1階がもっとも高く、2階以上にいる人はあわてて1階に降りてきてはいけません。1階にいた場合は、太い柱や丈夫な家具のそばでようすをみましょう。あわてて外に飛び出すと、かわらやガラス片などの落下物で大けがをします。
 阪神・淡路大震災では、倒壊した建造物の下敷きとなり亡くなった人がほとんどでした。また、この地震を契機に、圧挫症候群(クラッシュ症候群)が広く知られるようになりました。

■屋外にいた場合
 屋外でのけがでもっとも多いのは、ガラス片、かわら、外壁タイル、看板などの落下物による受傷です。屋外で地震にあったときはコート、カバン、バッグなどで頭部を保護し、大きな街路樹の下や地下鉄入り口に一時避難します。

■車内にいた場合
 自動車を運転中に地震を感じたら、ブレーキをゆっくり踏んで道路左側に静かに停車します。列車や地下鉄に乗っていたときは、係員の指示に従ってください。くれぐれもパニックにおちいらないようにすることが大切です。

■津波がきた場合
 東日本大震災では、亡くなられた人の多くが津波によるとされています。津波は猛烈な速度で、強大なエネルギーをもって襲ってきます。ただちに避難を開始し、一刻も早く高い場所に避難してください。
 では、大規模地震発生直後48時間以内に、わたしたちがおこなうことは何でしょうか。
 もちろんあなたがけがをして身動きできない場合は、救助をまつことです。しかし、あなたが身動きできる場合は不明者の捜索と救助をおこなってください。救命医療の立場からは、おそくとも72時間以内に救出する必要があるとされています。
 阪神・淡路大震災の報告では、震災当日救助された生存者の救命率は80.5%、2日目は生存率28.5%、3日目は生存率21.8%と報告されています。また、倒壊家屋の下敷きになった3.5万人のうち約2.7万人は近隣住民により救出され、生存率は80%を超えていたとの報告もあります。東日本大震災では津波被害が甚大でしたが、大規模地震発生直後は、不明者の捜索と救助を最優先でおこなうことが大切です。

■避難所での注意
 近年は台風・風水害も頻発しています。次のような事例は、いつでも、どこでも起こりうるようになっています。

<事例>
 台風の影響で大雨特別警報が発表されました。これまでに経験したことのないような大雨となっており、土砂くずれや浸水による重大な危険が差し迫った異常事態と判断され、あなたの住んでいる市町村は,河川の水位の上昇に伴い、避難指示を発表しました。そして、あなたの住んでいる地域の住民約50人は指定避難所に避難し、台風が通過し雨がやみ河川の水位が低下するまで避難生活をすることになりました。

・気をつけること
 避難所で、住民の健康を維持するために最優先されるのは衛生環境の保持です。台風の時期では食中毒や下痢症の流行が心配されますので、まずは手洗い、トイレの適切な使用に心掛けてください。マスクを着用し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やインフルエンザなどの呼吸器感染症の流行にも注意すべきです。

●避難所生活における感染症対策
急性期感染症対策:避難所生活開始~
1.感染症患者の早期発見、情報共有。特に、呼吸器感染症(上気道炎、新型コロナウイルス感染症、インフルエンザ、気管支炎・肺炎、結核など)、消化器感染症(感染性腸炎・下痢症、肝炎など)の発生、流行に注意
2.感染症予防策(手指衛生・消毒、咳エチケット)の周知・徹底、3密の回避、水道やトイレの管理強化、ごみの保管・処理の適正化
3.感染症発症時の隔離策、予防策の実行
4.有害昆虫(ハエやカなど)発生防止策の実行
亜急性期~慢性期の健康管理:避難所生活開始後数日~
1.疾病保持者の避難と治療中断への対応:服薬中断による高血圧症や狭心症、糖尿病の悪化、在宅酸素療法中断による呼吸不全悪化、血液透析中断による慢性腎不全悪化など
2.心のケア:厚生労働省によって災害派遣精神医療チーム(disaster psychiatric assistance team:DPAT)の呼称と活動要領が定められています
3.保健師、医師などによる健康相談、健康管理。必要ならば予防接種の実施
4.避難所生活長期化に備えて居住環境整備(嗜好品の供給、通信手段の整備など)
5.ペット対策(犬や猫、小鳥も避難民)


(執筆・監修:社会医療法人恵生会 黒須病院 内科 河野 正樹)

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