乳がんの診断では、乳房専用のX線撮影装置を用いたマンモグラフィ(乳腺撮影)が広くおこなわれています。乳房をアクリル板で圧迫し、薄く伸ばした状態にして撮影します。薄く伸ばすことで正常な乳腺の重なりが少なくなり、ボケの少ない鮮明な画像を得ることができます。これにより、乳房内の腫瘤(しゅりゅう)の形や周囲との境目の状態、内部の性状などが観察しやすくなります。全体をくまなく写し出すために、乳房を片方ずつ、複数の方向から撮影します。撮影は、上下方向にはさんだ状態(CC:頭尾方向)と、縦方向で少し斜めにはさんだ状態(MLO:内外斜位方向)でおこなうのが一般的です。
マンモグラフィは圧迫による痛みを感じるのが難点ですが、がんによくみられる石灰化(白い点)を描出するのに優れており、触診では見つからないような小さな乳がんが発見できることもあります。乳腺が発達している人では、乳腺が濃く写ることで(デンスブレスト:dense breast)見にくくなることもありますが、乳腺の退縮する閉経後ではがん発見にきわめて有用な検査とされています。
(執筆・監修:自治医科大学 教授〔臨床検査医学〕 紺野 啓)