造影X線検査 家庭の医学

 単純X線撮影では臓器自体が写りにくい場合、X線透過率の低い液体(造影剤)を使用することで、臓器や病変の輪郭を、X線画像として描き出せる場合があります。この検査(造影X線検査)は、生体内に存在する、ある程度閉鎖された空間(腔〈くう〉)の内部(内腔)に、造影剤を注入しておこないます。目的に合った適切な造影剤を適切な方法で注入することで、消化管、心臓、血管、気管支、関節、膀胱(ぼうこう)、唾液(だえき)腺など、さまざまな臓器の観察が可能になります。
 もっとも代表的な造影検査の一つが、消化管(食道、胃、十二指腸、小腸、大腸)の検査です。この場合は液状のバリウムが造影剤として用いられます。検査では、まず弱いX線を連続的に照射しながら、バリウムを消化管内に注入し、流れ具合やたまりかたを動画で観察します(X線透視)。ついで透視しながら、目標の病変、撮影範囲や方向を決めてX線写真を撮影します。
 消化管の造影検査(胃透視、注腸造影など)では、内部にためたバリウムで消化管をふくらませ、バリウムの塊として描き出された消化管の形態や輪郭を評価する「充盈法(じゅうえいほう)」と、少量のバリウムを粘膜表面に薄く付着させた状態で、空気を入れて消化管をふくらませ、描き出された粘膜表面の鋳型像から微細な形態を評価する「二重造影法」が用いられます。このうち二重造影法はわが国で発展したテクニックで、特に早期がんの診断に大きく貢献してきました。

(執筆・監修:自治医科大学 教授〔臨床検査医学〕 紺野 啓)