救急医療のしくみ、救急車の呼びかた

■救急医療のしくみ
 わが国の救急医療の整備は、1964年(昭和39年)に厚生省(現厚生労働省)の救急病院等を定める省令により救急病院、診療所が告示されることから着手されました。この背景には交通事故による死亡者、負傷者が急増し、いわゆる「たらいまわし」が社会問題化したことがありました。
 いっぽう、高齢社会に伴う疾病構造の変化に対応するため、1977年から厚生省により初期救急医療施設から第2次、第3次救急医療施設へ流れる救急医療システムが構築されました。もっとも重い患者さんは第3次救急医療施設で対応しています。
 しかし、プレホスピタルケア(病院に到着する前の救急医療体制)の遅れから、欧米社会にくらべわが国の心肺停止患者の救命率が低いことが問題となり、1992年(平成4年)に救急救命士が誕生し、病院前救護体制の整備がはかられています。2000年代に入ってから各地でドクターカー、ドクターヘリが普及し、医師が現場で救命処置を開始できる体制が準備されつつあります。
 救急救命士は医療従事者の一員として、点滴や薬物投与も含んださまざまな観察・処置をおこなっており、救命率向上に寄与しています。
 ただし、高齢者が増加するとともに21世紀に入ってから救急車の搬送件数が全国的に漸増しています。そのため、前述の救急医療システムだけでは限界があり、第2次、第3次救急医療施設へも軽症の傷病者を搬送せざるを得ない状況となっています。

■救急車の呼びかた
□119番へ電話をする
 救急車を呼ぶときは局番なしの119番をダイヤル。電話を受けた消防署では「救急ですか、火事ですか」とたずねますので、はっきりと「救急です」と答えます。
 次に、所番地と、わかりやすい目標を伝えるようにしましょう。ビルやマンションの場合には、建物名や何階の何号室かを、道路上の場合は交差点名や目標となる建物なども説明します。
 そして、けがや病気の原因と現在のようすなどを簡潔に伝えることが大切です。

□電話の種類による注意
 自宅の固定電話では、受話器を取ってから119番をダイヤルします。
 公衆電話では、種類により注意が必要です。緑色の公衆電話では、受話器をとって、左下の赤い緊急通報ボタンを押してから119番をダイヤル。グレーの公衆電話では、受話器をとり119番をダイヤル。いずれもテレホンカードや硬貨は不要です。
 携帯電話では、119番につながらない地域があります。また、管轄しているところとはちがう消防署につながることがありますので、自分のいる現在地をできるだけわかりやすく伝えるようにしましょう。

(執筆・監修:医療法人財団健和会 みさと健和病院 救急総合診療研修顧問 箕輪 良行)