落下・転倒によるけが 家庭の医学

 落下・転倒によるけがでは、高齢者の骨折が多くみられます。高齢者は骨がもろいこと(骨粗鬆症〈こつそしょうしょう〉)が多く、ちょっとした転倒でも、整形外科を受診しましょう。

■高齢者の場合
□転倒し手をついたとき
 手くびの周囲がはれて痛みがあり、動きで痛みが増し、時に変形することがあります。手くびの骨折が多く、必ず整形外科を受診しましょう。
 また、手をついたときに、ひじや上腕をいためることもあるので、受診の際に相談することが大切です。

□転倒したとき
 おしりやおしりの外側を打って、痛みのために動けないときがあります。背骨がつぶれる脊椎(せきつい)圧迫骨折が考えられ、これは背中や腰が曲がる原因です。
 神経までわるくなることは少ないのですが、痛みで起きられず、寝たきりになることがあります。起きられなかったり痛みが続くときは、ちゅうちょせずに整形外科を受診します。
 さらに、股の付け根(股関節〈こかんせつ〉)の骨折も考えられます。骨折した側の足が痛くて動かせないため、軽い脳卒中のまひと勘違いされます。脳卒中の場合、足だけではなく同じ側の手のまひもみられ、痛みをあまり感じないのが特徴です。いっぽう、骨折の場合はすこし足を動かすと痛みがあり、これで区別ができます。
 股関節の骨折は、正式には大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)骨折といいます。歩けないので寝たきりとなり、全身状態がわるくなって生命にかかわることがあります。整形外科があり、入院設備のある病院で診てもらうようにしましょう。
 最近、骨粗鬆症に効果のある薬ができました。高齢者の方は骨折していなくても、一度整形外科医と相談してみるとよいと思います。

(執筆・監修:八戸市立市民病院 事業管理者 今 明秀)