ダンピング症候群〔だんぴんぐしょうこうぐん〕

 ダンピングとは「急速に墜落する」という意味であり、文字どおり食べ物が胃の中にとどまらず急速に小腸内へ入るために起きる症状です。これは病気というよりも、からだが手術後の新しい環境に慣れるまでに通っていかなければならない道のりの一つと考えるべきでしょう。
 ダンピング症候群は、症状の発生する時間によって早期ダンピング症候群と晩期ダンピング症候群に分けられます。

■早期ダンピング症候群
 食後30分くらいの間に起きます。

[原因]
 食べた物が胃の中で薄められずに高濃度、高浸透圧(しんとうあつ)のまま小腸に送り込まれることによって起こります。

[症状]
 おなかがはり、吐き気や嘔吐(おうと)、腹痛が起き、顔面が紅潮したり脈が速くなり、発汗が起きたりします。

■晩期ダンピング症候群
 食後2~3時間して起こります。

[原因]
 糖分が急速に小腸内に流入することによって高血糖となり、その反応としてインスリンが過剰に分泌されるために起こる低血糖が本態です。

[症状]
 低血糖症状としてのめまい、脱力感、冷感、頭痛などが起きます。

■ダンピング症候群の治療
 ダンピング症候群はあきらかな病気ではありませんので、まず薬に頼らず食事療法を工夫して乗り切っていきます。もっとも大切なことは食事の量と食べるスピードに注意することです。早期・晩期に限らずダンピング症候群の本態は胃が小さくなり、またはなくなったことによって食べ物が急速に小腸内に墜落することです。
 したがって食べ物は少量ずつをゆっくりと時間をかけて食べてください。人と会食する場合などは相手の食事のペースにあわせず自分のペースを守ってください。食後はすぐに運動などはせず少しゆっくりと休んでください。
 また、低血糖となった場合に備えてアメなどを携帯しておくと安心です。手術後まもないころには早期ダンピングによる腹痛に悩まされ、食事に対して恐怖感をもつこともあります。腹痛は小腸運動の亢進(こうしん)によって発生しますので、このような場合には食前に腸の運動を抑える薬剤を服用すると安心して食べられるようになります。
 胃切除後のダンピング症状を克服するには最低1年くらいはかかりますので、あまり性急に考えずゆとりをもって食生活をおこなってください。

(執筆・監修:順天堂大学大学院医学研究科 教授〔食道胃外科〕 梶山 美明)
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