腎血管筋脂肪腫〔じんけっかんきんしぼうしゅ〕

 腎血管筋脂肪腫は、腎実質腫瘍で一般に良性腫瘍で症状がなく、健康診断時の超音波(エコー)検査によって見つかることがほとんどです。
 病名が示すように血管壁を有する血管、平滑筋、脂肪から構成されています。多くは単発で、片側性で右側に多くみられ、40~50歳で多く発見されています。女性に多いとされています。
 超音波では高エコーを示し、被膜はみられないのが特徴です。通常は脂肪成分が多く、腎(細胞)がんとの鑑別は容易です。超音波で診断がつきにくい脂肪成分の少ない腎血管筋脂肪腫もあり、その場合にはCT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像)検査でも診断がつきにくいこともあります。そのような腫瘍の場合には、時に診断を兼ね腎部分切除や摘出をおこない腫瘍の組織診断を行うこともありますが、頻度としては非常にまれです。腫瘍が増大する速度は比較的緩徐であり、4、5年でも数ミリといった程度とされています。しかし、腫瘍の大きさが4cm以上を超えるような症例では腫瘍出血の可能性が示唆されており、そのような場合には、腫瘍摘出あるいは腎臓に経動脈的にカテーテルを挿入して腫瘍の塞栓術をおこなうことが適切であるとされています。
 一般的には大きさが1cm未満では年1回の超音波検査で経過観察をおこなえばよいとされています。
 一つだけこの腎血管筋脂肪腫で留意しておきたいことがあります。結節性硬化症では腎血管筋脂肪腫が80%近くみられます(結節性硬化症は脳、腎臓、肺、皮膚、心臓など全身のさまざまな場所に腫瘍をはじめとする症状が出る、おもに小児の病気です。しかし、必ず病状があらわれるとはかぎりません)。

(執筆・監修:医療法人財団みさき会 たむら記念病院 院長 鈴木 洋通)
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