腎(細胞)がん〔じん(さいぼう)がん〕 家庭の医学

 腎臓のがんの大部分は腎細胞がんで、腎臓の尿細管上皮から発生するとされています。検診やほかの病気でおこなった超音波(エコー)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査で偶然発見されることが多く、症状で見つかることはまれです。確定診断も多くの場合CTで可能です。症状があるとすれば、血尿、側腹部の痛み、腹部の腫瘤などです。遺伝的に腎がんができやすい病気もあります。

 治療の原則は、腫瘍のある腎臓の摘出(腎摘除)です。比較的小さい腫瘍などでは、腫瘍とその周囲の組織だけを切除すること(腎部分切除)もおこなわれます。いずれの手術も、開腹手術、腹腔(ふくくう)鏡下手術、ロボット支援手術でおこないます。部分切除術には、ロボット支援手術が一般的となっています。
 がんが進行すると下大静脈の中にまで腫瘍が伸びてくることもあり、その場合は肝臓外科や血管外科、時には心臓外科との共同手術になります。
 腎細胞がんの転移は肺や骨が多いです。手術でとりきれたと思っても、長期間経過してから転移が見つかることもあるので注意が必要です。転移がある場合、以前はサイトカイン療法(免疫細胞のはたらきを高める薬)が中心でしたが、最近では分子標的薬治療(がんに特有の分子の作用を抑える薬)、免疫チェックポイント阻害薬(がんのために抑えられている免疫細胞のはたらきを戻す薬)の単剤または併用療法がおこなわれます。いずれも特有の副作用があるので、治療前に主治医とよく相談する必要があります。

(執筆・監修:東京大学大学院医学系研究科 教授〔泌尿器外科学〕 久米 春喜)
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