先天性副腎過形成〔せんてんせいふくじんかけいせい〕

 ステロイドホルモンは、さまざまな酵素の作用でコレステロールから合成されますが、先天的な酵素異常によりコルチゾールが十分に産生されず、他のステロイドホルモンが過剰につくられてしまうことがあります。遺伝的な疾患です。
 頻度が高いのは21-ヒドロキシラーゼという酵素の異常によるもので、コルチゾールやアルドステロンが十分に分泌されないために、アジソン病と同様に副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が増加して色素沈着がみられます。ACTH分泌増加のために副腎は肥大します。低ナトリウム血症、高カリウム血症、低血圧などもアジソン病と同様です。
 いっぽうで、この疾患では、別の経路によってテストステロン、アンドロゲンなどのホルモンが多量に分泌されるので、女子では陰核肥大など外性器の男性化、体毛の増加、無月経を呈します。また、男子では性早熟症(ペニスの発達、陰毛の発生、変声など)を呈し、身長も同年齢の正常児よりも高くなりますが、適切な治療がおこなわれないと最終身長は低身長となります。現在新生時期スクリーニングがおこなわれており、早期の診断が可能です。
 治療はコルチゾールを投与して、ACTH分泌を抑えて男性ホルモンの分泌を低下させることが必要です。その他の酵素欠損はまれですが、その種類によって外性器の異常や高血圧などを示します。

(執筆・監修:東京女子医科大学 常務理事/名誉教授 肥塚 直美)
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