中国・Southern Medical University/Nanfang Hospital/National Clinical Research Center for Kidney DiseaseのChun Zhou氏らは、UK Biobankの60歳以上の登録者21万例超を12年間追跡し、高齢者におけるサプリメントによる習慣的なグルコサミンの摂取と各種の認知症との関連を検討。その結果、習慣的グルコサミン摂取は血管性認知症の新規発症リスク低下と有意な関連があったが、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症との関連は認められなかったとAlz Res Therapy2023; 15: 152)に発表した。

Caサプリ併用、亜鉛サプリ非併用でより顕著

 解析対象は、2006~10年のUK Biobank登録時に60歳以上かつ認知症未発症で、グルコサミン摂取に関するデータが得られた21万4,945例(平均年齢64.1歳、女性52.8%)。このうち、5万2,893例(24.6%)が習慣的にグルコサミンを摂取していた。

 中央値で12年の追跡期間における血管性認知症アルツハイマー病、前頭側頭型認知症の発症は、グルコサミン非摂取群でそれぞれ1,039例、1,774例、122例、グルコサミン摂取群で229例、581例、32例だった。

 Cox比例ハザードモデルによる解析の結果、習慣的グルコサミン摂取は血管性認知症の新規発症リスク低下と有意な関連があった〔調整後ハザード比(aHR)0.83、95%CI 0.70~0.97、P=0.023〕。しかし、アルツハイマー病(同1.00、0.89~1.11、P=0.929)、前頭側頭型認知症(同1.20、0.78~1.85、P=0.401)の新規発症リスクとは有意な関連が認められなかった。

 習慣的グルコサミン摂取と血管性認知症リスク低下の関連は、カルシウム(Ca)サプリメントの併用者〔併用者のaHR 0.46(95%CI 0.28~0.75) vs. 非併用者のaHR 0.87(同0.74~1.03)、交互作用のP=0.011〕、亜鉛サプリメントの非併用者〔非併用者のaHR 0.79(同0.67~0.93) vs. 併用者のaHR 1.74(同0.91~3.31)、交互作用のP=0.018〕でより強かった。

apoEε4アレルの有無、ベースラインの認知機能による差なし


 アポリポ蛋白(apo)Eε4アレルの非保有者と比べて、保有者では血管性認知症(aHR 5.81、95%CI 4.72~7.15)、アルツハイマー病(同12.05、10.54~13.77)の新規発症リスクが有意に高かった。しかし、グルコサミン摂取と新規発症リスクとの関連については、apoEε4アレル保有の有無による有意差は血管性認知症(交互作用のP=0.188)、アルツハイマー病(交互作用のP=0.375)のいずれでも認められなかった。また、ベースラインの認知機能、年齢、性、BMIなどの因子による有意差も認められなかった(全て交互作用のP>0.05)。

 以上の結果から、Zhou氏らは「高齢者における習慣的グルコサミン摂取は、apoEε4アレル保有の有無およびベースラインの認知機能にかかわらず、血管性認知症の新規発症リスク低下と有意な関連があった」と結論。「今後、他の研究でも同様の結果が確認されれば、サプリメントによる習慣的グルコサミン摂取が高齢者における血管性認知症の一次(初発)予防に使用される可能性がある」と付言している。

(太田敦子)