プロポリスが持つ認知機能の低下抑制作用
株式会社 山田養蜂場
アミロイドβによる炎症を抑えるメカニズムの一端を解明
株式会社山田養蜂場(所在地:岡山県苫田郡鏡野町、代表:山田英生)の自社研究所である、山田養蜂場 健康科学研究所は、アルツハイマー型認知症モデルにおいて、ブラジル産グリーンプロポリスがアミロイドβによる炎症を抑え、認知機能の低下を抑制する作用を持つ可能性を示しました。本研究は、科学雑誌 『BMC Complementary Medicine and Therapies』(2023年11月発行)に掲載されました。
【研究背景】
認知症はアルツハイマー型(AD)、脳血管型、レビー小体型など、原因によって複数のタイプに分類されます。
日本では、65歳以上の高齢者において、約600万人が認知症を発症していると推計され、
2025年には700万人以上、高齢者の約5人に1人が認知症になると予測されています。
認知症患者の中で最も割合が高いADは、脳にアミロイドβ(Aβ)と呼ばれるタンパク質が過剰に蓄積し、
神経細胞が障害されることで発症すると考えられています。
そのため、ADの予防や治療に関する研究では、脳にAβを注入してADを引き起こすアルツハイマー型認知症モデル(以下ADモデル)が用いられています。
プロポリスはミツバチが植物の新芽や樹脂から作り出す物質で、高い抗酸化作用や抗炎症作用を持つことが知られています。
また、プロポリスはこれまでの研究において、脳の神経細胞を保護する働きや、
脳の免疫細胞が誘発する炎症を抑制する働きが明らかにされたほか、
物忘れを自覚する健康な高齢者の認知機能を改善したことが報告されています。
本研究ではADにより認知機能が低下したADモデルを用いて、プロポリスが認知機能低下に与える予防的な影響やそのメカニズムの解明を試みました。
【研究結果】
プロポリスはADモデルのAβによる全身の炎症を抑えることで、学習・記憶障害を改善する可能性が示されました。
※1:短期記憶を整理し、長期記憶として蓄える役割を担う脳の領域。アルツハイマー型認知症は主に海馬が障害される。
【研究詳細】
ミツバチが作り出す素材の一つである「プロポリス」はこれまでの研究で、脳の神経細胞を保護することや、
脳の免疫細胞に対して抗炎症作用を持つことが知られている。
また、ヒトにおいて健常な高齢者の認知機能の維持作用が報告されている。
しかしながら、ブラジル産グリーンプロポリスのADに対する働きやその作用機序は完全には解明されていない。
本研究は、ブラジル産グリーンプロポリスのADに対する予防的な作用とメカニズムを調べることを目的に試験を行った。
【試験方法】
コントロール群(1.正常群)と、試験開始から8日目にAβを脳に注入した4群(ADモデル)に分けた。
ADモデルは、2.プロポリスを投与しなかった群、3.プロポリス100mg/kg投与群、4.300mg/kg投与群、5.900mg/kg投与群に分けて、試験開始から終了までの16日間毎日投与した。
15日目に回避行動※2を学習させ、16日目に学習・記憶障害の程度、海馬の遺伝子発現パターン、血液中の炎症性サイトカイン※3量を比較した。
※2:一度経験した不快な刺激に対して、それを回避しようとする学習・記憶能力。
※3:細胞から産生される、細胞間の情報伝達を司るタンパク質。免疫応答、炎症、細胞増殖など多様な機構に関わる。
【試験結果】
<学習・記憶障害を抑制>
1.正常群と比較して、2.ADモデル群は学習・記憶能力が障害された。
一方、5.プロポリス(900mg/kg)投与群においては、2.ADモデル群と比較して、学習・記憶障害が抑制された(図1)。
<免疫応答・炎症反応に関わる遺伝子発現を抑制>
1.正常群と比較して、2.ADモデル群は遺伝子発現パターンが変化した。
発現が変化した遺伝子を解析すると、主に免疫応答・炎症反応に関わる遺伝子であることがわかった。
また、5.プロポリス(900mg/kg)群では、これらの遺伝子発現の変化を抑える働きがみられた(図2)。
このうち、Trem2遺伝子※4の発現量を比較した結果、2.ADモデル群は、1.正常群よりも発現量が増加した。
一方で、5.プロポリス(900mg/kg)群は2.ADモデル群より増加量が低下した。(図3)
<Aβによる全身の炎症反応を抑制>
1.正常群と比較して2.ADモデル群は、血液中の炎症性サイトカイン(IL-6)が増加した。
一方で、5.プロポリス(900mg/kg)群は、2.ADモデル群と比較して、IL-6が低下した。
このことにより、アミロイドβによる全身の炎症反応をプロポリスが抑えることが確認された。(図4)
これらの結果から、ブラジル産グリーンプロポリスは、アミロイドβによる炎症を抑えることで、学習・記憶障害を改善する可能性が示されました。
【今後について】
本研究では、ブラジル産グリーンプロポリスの認知機能障害に対する予防的作用のメカニズムの一端を解明することができました。
今後も研究を重ね、プロポリスのさらなる機能性の解明につなげてまいります。
引き続き当社は、プロポリス、ローヤルゼリーなどのミツバチ産品に関する有用性研究や素材開発を通し、
予防医学の観点から「アピセラピー」を追究することで、お客さま一人ひとりの健康寿命を延伸し、社会に貢献してまいります。
<文献情報>
論文タイトル: Brazilian green propolis prevent Alzheimer’s disease-like cognitive impairment
induced by amyloid beta in mice
掲載誌:BMC Complementary Medicine and Therapies
掲載日:2023年11月17日
URL:https://bmccomplementmedtherapies.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12906-023-04247-7#citeas
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アミロイドβによる炎症を抑えるメカニズムの一端を解明
株式会社山田養蜂場(所在地:岡山県苫田郡鏡野町、代表:山田英生)の自社研究所である、山田養蜂場 健康科学研究所は、アルツハイマー型認知症モデルにおいて、ブラジル産グリーンプロポリスがアミロイドβによる炎症を抑え、認知機能の低下を抑制する作用を持つ可能性を示しました。本研究は、科学雑誌 『BMC Complementary Medicine and Therapies』(2023年11月発行)に掲載されました。
【研究背景】
認知症はアルツハイマー型(AD)、脳血管型、レビー小体型など、原因によって複数のタイプに分類されます。
日本では、65歳以上の高齢者において、約600万人が認知症を発症していると推計され、
2025年には700万人以上、高齢者の約5人に1人が認知症になると予測されています。
認知症患者の中で最も割合が高いADは、脳にアミロイドβ(Aβ)と呼ばれるタンパク質が過剰に蓄積し、
神経細胞が障害されることで発症すると考えられています。
そのため、ADの予防や治療に関する研究では、脳にAβを注入してADを引き起こすアルツハイマー型認知症モデル(以下ADモデル)が用いられています。
プロポリスはミツバチが植物の新芽や樹脂から作り出す物質で、高い抗酸化作用や抗炎症作用を持つことが知られています。
また、プロポリスはこれまでの研究において、脳の神経細胞を保護する働きや、
脳の免疫細胞が誘発する炎症を抑制する働きが明らかにされたほか、
物忘れを自覚する健康な高齢者の認知機能を改善したことが報告されています。
本研究ではADにより認知機能が低下したADモデルを用いて、プロポリスが認知機能低下に与える予防的な影響やそのメカニズムの解明を試みました。
【研究結果】
プロポリスはADモデルのAβによる全身の炎症を抑えることで、学習・記憶障害を改善する可能性が示されました。
※1:短期記憶を整理し、長期記憶として蓄える役割を担う脳の領域。アルツハイマー型認知症は主に海馬が障害される。
【研究詳細】
ミツバチが作り出す素材の一つである「プロポリス」はこれまでの研究で、脳の神経細胞を保護することや、
脳の免疫細胞に対して抗炎症作用を持つことが知られている。
また、ヒトにおいて健常な高齢者の認知機能の維持作用が報告されている。
しかしながら、ブラジル産グリーンプロポリスのADに対する働きやその作用機序は完全には解明されていない。
本研究は、ブラジル産グリーンプロポリスのADに対する予防的な作用とメカニズムを調べることを目的に試験を行った。
【試験方法】
コントロール群(1.正常群)と、試験開始から8日目にAβを脳に注入した4群(ADモデル)に分けた。
ADモデルは、2.プロポリスを投与しなかった群、3.プロポリス100mg/kg投与群、4.300mg/kg投与群、5.900mg/kg投与群に分けて、試験開始から終了までの16日間毎日投与した。
15日目に回避行動※2を学習させ、16日目に学習・記憶障害の程度、海馬の遺伝子発現パターン、血液中の炎症性サイトカイン※3量を比較した。
※2:一度経験した不快な刺激に対して、それを回避しようとする学習・記憶能力。
※3:細胞から産生される、細胞間の情報伝達を司るタンパク質。免疫応答、炎症、細胞増殖など多様な機構に関わる。
【試験結果】
<学習・記憶障害を抑制>
1.正常群と比較して、2.ADモデル群は学習・記憶能力が障害された。
一方、5.プロポリス(900mg/kg)投与群においては、2.ADモデル群と比較して、学習・記憶障害が抑制された(図1)。
<免疫応答・炎症反応に関わる遺伝子発現を抑制>
1.正常群と比較して、2.ADモデル群は遺伝子発現パターンが変化した。
発現が変化した遺伝子を解析すると、主に免疫応答・炎症反応に関わる遺伝子であることがわかった。
また、5.プロポリス(900mg/kg)群では、これらの遺伝子発現の変化を抑える働きがみられた(図2)。
このうち、Trem2遺伝子※4の発現量を比較した結果、2.ADモデル群は、1.正常群よりも発現量が増加した。
一方で、5.プロポリス(900mg/kg)群は2.ADモデル群より増加量が低下した。(図3)
<Aβによる全身の炎症反応を抑制>
1.正常群と比較して2.ADモデル群は、血液中の炎症性サイトカイン(IL-6)が増加した。
一方で、5.プロポリス(900mg/kg)群は、2.ADモデル群と比較して、IL-6が低下した。
このことにより、アミロイドβによる全身の炎症反応をプロポリスが抑えることが確認された。(図4)
これらの結果から、ブラジル産グリーンプロポリスは、アミロイドβによる炎症を抑えることで、学習・記憶障害を改善する可能性が示されました。
【今後について】
本研究では、ブラジル産グリーンプロポリスの認知機能障害に対する予防的作用のメカニズムの一端を解明することができました。
今後も研究を重ね、プロポリスのさらなる機能性の解明につなげてまいります。
引き続き当社は、プロポリス、ローヤルゼリーなどのミツバチ産品に関する有用性研究や素材開発を通し、
予防医学の観点から「アピセラピー」を追究することで、お客さま一人ひとりの健康寿命を延伸し、社会に貢献してまいります。
<文献情報>
論文タイトル: Brazilian green propolis prevent Alzheimer’s disease-like cognitive impairment
induced by amyloid beta in mice
掲載誌:BMC Complementary Medicine and Therapies
掲載日:2023年11月17日
URL:https://bmccomplementmedtherapies.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12906-023-04247-7#citeas
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(2023/12/15 10:00)
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