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ガザ戦闘100日:繰り返される退避勧告と病院への攻撃が医療を奪う

国境なき医師団
イスラエルとハマスの衝突が激化した10月7日から100日が経過した。イスラエル軍によるガザ地区への総攻撃は人びとから医療へのアクセスを奪い、医療活動を行う安全な空間はもはや存在しない。イスラエルによって繰り返される退避勧告と医療施設への攻撃により、国境なき医師団(MSF)を含む医療団体は、何度も患者を置いたまま、病院から避難せざるを得ない事態が続いている。


ガザ南部のアル・シャボウラ診療所の待合室で患者に対応するMSFのスタッフ=2023年12月16日 (C) Mohammad Abed

医療制度は崩壊



ガザでMSFのプロジェクト・コーディネーターを務めるトマ・ローバンは、「ニーズが増え続ける一方、医療援助活動は制限され、私たちは徐々に南部ラファのごく限られた地域に追い詰められています。攻撃が進むにつれ、私たちは活動していた北部の医療施設から避難、そして次は中部の医療施設からも避難しなければならなくなりました。現在、活動は主に南部に限られています。病院は足りず、患者を置き去りにするしかないのです」と憤る。

ガザの医療制度は事実上崩壊している。世界保健機関(WHO)の報告によると、ガザにある36の病院のうち、部分的にでも機能しているのは、南部の9カ所と北部の4カ所の13カ所だけだ。南部にある2カ所の大病院は、基礎的な物資や燃料が不足する中、ベッド数の3倍の患者に対応している。

病院が「危険すぎる場所」に



1月6日、イスラエル軍が中部のミドル・エリア地区にある病院周辺の住民に退避勧告を出したため、MSFも支援していたアル・アクサ病院から避難を余儀なくされた。この強制的な避難によって、薬を保管場所に取りに行くことも難しくなり、医療活動の環境は明らかに悪化した。

ガザでMSFの医療チームリーダーを務めるエンリコ・バッラペルタは、「アル・アクサ病院と患者をそのまま残していくことは、心が引き裂かれる決断であり、最後の手段でもありました。ドローンによる空爆、狙撃や砲撃で、病院は活動するには危険すぎる場所になってしまいました。いつ何が起きるか分からない状況下で、私たちは無力感にさいなまれています。人びとに最低限の医療を提供する安全な場所さえ、事実上ないのです」と嘆く。

南部でも医療環境は悪化



ガザの多くの地域、特に北部では、医療施設やその周辺がイスラエル軍に何度も攻撃され、退避勧告が出されるなど、医療へアクセスすることも医療を提供することも命懸けとなっている。MSFが活動していた複数の病院でも同様で、10月には北部のインドネシア病院から避難を余儀なくされ、11月にはガザ最大のシファ病院が攻撃を受けスタッフが避難。そして、2018年以来MSFが支援してきたアル・アウダ病院も攻撃を受け、2人のMSFスタッフを含む3人の医師が殺された。

2人のMSFスタッフを含む3人の医師が死亡し、多数の負傷者が出たアル・アウダ病院=2023年11月21日 (C) MSF

現在は同様のパターンが南部でも繰り返されている。南部の人口は戦闘開始前の5倍に膨れ上がり、医療機関は少ない

南部は、11月の一時休戦終了以来、激しい爆撃の標的となっており、救急、外科、術後ケアの膨大な医療ニーズがある。病院の対応力は不足し、十分な治療と衛生環境は確保されず、その結果、細菌に感染した傷口が増え、極限状態で医療処置が行われることになる。重傷だけでなく、帝王切開を受けた女性の多くは、他の妊婦に場所を明け渡すために分娩後わずか6時間で退院させられる。一方、病院で出産できずに追い返され、テントで出産する人もいる。

即時かつ持続的な停戦を



MSFは、ガザでの医療提供に尽力し、病院、医療スタッフ、患者の保護を呼びかけ続けていく。MSFは現在、ラファの首長国病院で産前・産後のケアを提供し、インドネシア野外病院で理学療法と術後ケアを支援、アル・シャボウラ診療所で基礎診療、創傷被覆・包帯交換、心のケアを行っている。また、ヨーロッパ病院を小規模な外科手術でサポートしており、看護師の小さなチームが創傷被覆を必要とする患者を支援している。北部のアル・アウダ病院とハンユニスのナセル病院では、空爆や近隣での戦闘のために食料や医薬品が不足するなど、極めて厳しい状況の中で、わずかなMSFスタッフが働いている。

MSFは、市民の命を守り、人道援助の流れを回復させ、ガザの人びとの生存がかかっている医療体制を再構築するために、即時かつ持続的な停戦を改めて要請する。
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