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メドテック特化型のインキュベーター「プレモパートナー」が、優秀スタートアップ企業を表彰

プレモパートナー株式会社
Mixed Realityを用いたパーキンソン病のリハビリテーション支援デバイス「リハまる」を提供する株式会社テクリコがMedtech Angels最優秀賞

プレモパートナー*は、2024年5月23日に「Medtech Angels Season3-DemoDay-」を開催。医療関係者、投資家、事業会社から約230人(会場110人、オンライン120人)が参加し、Medtech分野への関心の高まりを示すものとなった。今回も6社のスタートアップによる新規事業が紹介され、このなかから最優秀賞「株式会社テクリコ」が決まった。また、昨年度の最優秀賞を受賞した株式会社スパインクロニクルジャパンの1年間の事業活動の報告も行われている。さらに、パネルディスカッション「私たちの目指すインキュベーター」と題して、この分野に携わるパネリストからシリコンバレーのインキュベーション事情、ならびに日本の課題などが指摘された。これらは、後日公開する。ここでは、テクリコの概要と受賞理由、その背景を報告する。


Medtech Angelsがめざすもの


事業アイデアを持っている医師や研究者、または異業種の企業人が、医療分野へ参入する場合、法規制や開発プロセスに知見がなく、アイデア段階から上市後までの事業戦略を描けず、途中で頓挫してしまうことが多い。

そこでMedtech Angelsでは、こうした事業家が最後まで走りきれるよう、初期から事業ステージごとのハードルを明確にし、それに対する的確なアクションプランが立てられるようにしていく。提供するプログラムは、医療機器の薬事戦略や保険償還戦略など具体的かつ専門的な講義、さらにメンタリングなどだ。こうしたサポートは、本格的な開発プロセスに入る前の事業戦略の策定ができるようにしていく「アクセレータープログラム」であり、スタートアップ企業にとっては早期の成長機会を得ることができるものだ。

このMedtech Angelsを運営するプレモパートナーは、多くの患者に必要とされる新しい医療機器を少しでも早く現場に届けるために、専門家集団がスタートアップ企業に寄り添い、事業化に必要なサービスを提供していくことを主としている。そのため、プレモパートナーでは医療機器開発のインキュベーターとして、スタートアップ企業に「常に寄り添う」ことを行動指針としている。
(写真前列左から)UniMedical株式会社、株式会社Curelity、株式会社テクリコ、FairMed、株式会社asai、8ILLION

Mixed Reality (MR/複合現実)でパーキンソン病のリハビリ


今回のMedtech Angels Season3-DemoDay-では6社が、多くの関係者を前にしてピッチを行った。いずれも参加者の関心を惹くインパクトのあるプレゼンテーションで、起業家としての一歩は高評価を得たものだった。

そのなかでも多くの審査員の関心を惹いたのが、今回受賞した株式会社テクリコの『リハまる』だ。

テクリコは、原因不明の指定難病であるパーキンソン病の運動療法の改善を促進するシステム開発を行う。現在、中程度以上の患者は全国で14万人いると言われ、現状では根治できない疾患とされている。薬物療法や手術という手段もあるが、対処療法による治療しかないのが現状だ。

そのリハビリテーションをサポートするシステムを開発していこうとするのがテクリコである。高度な技術をもつIT集団でもあり、MR(Mixed Reality/複合現実)技術を使い、現実空間のなかに仮想空間をつくり出して、リハビリテーションを行うというシステムだ。自宅でも運動することが重要だといわれるパーキンソン病では、このMRによるリハビリは従来の運動療法と比べても有意な改善がみられたという結果も出ている。

審査員からは、戦略が明確で、事業領域への理解も深く、事業化への道筋が見えていると、高評価を得た。今後の上市までの動きに目が離せない。

また、このMedtech Angelsは多くの協賛企業の支援もあり、スタートアップ企業の事業の精度をますます向上させるのに役立てられている。これはスタートアップ企業と支援者の両者が、多くの患者に新しい医療を届けられるよう、医療テクノロジーの発展に貢献していきたい、という思いの結実ともいえる。

日本のスタートアップ企業を育てる


では、なぜ日本で医療機器のスタートアップ企業が少数で、成功例が少ないのか。

その背景には、日本の置かれた事情がある。医療機器が規制ビジネスであること、製品化においては人体に使用するという点で確実に「有効性と安全性」を担保しなければならない。そのために開発に膨大な時間を要し、一般的には5~10年かかり、その間はマネタイズができない。

この上市するまでの期間に、各開発ステージで適切に資金を調達しながら完了しなければいけない。多くの場合、資金調達が円滑に行われればよいと思われているが、開発ステージごとの障壁が大きいのもイノベーションが生まれない要因である。それが、日本で医療機器開発をめざすスタートアップ企業が少ないゆえんだ。

事業をアイデアから開発し、販売に至るまでには、1.基礎研究、2.実用化に向けた応用研究、3.コンセプトを検証するための非臨床試験、4.安全性有効性を検証する治験・臨床研究 を経て、規制当局から許認可されてはじめて、ようやく販売にこぎ着けることができる。これらプロセスはいずれも専門性が高く、市場が閉鎖的で複雑、かつ長い年月がかかるからだ。

そこでプレモパートナーでは、スタートアップビジネスが成功するための製品の開発段階に応じた必要な支援が受けられよう、多種のプレイヤーとの連携ができる体制を整え、スタートアップ企業に提供する。こうした支援を通じて、スタートアップ企業は上市するまでの時間を効率的に使うことができ、製品を市場にいち早く届けられるというメリットがある。

未成熟で分断された日本の医療機器分野。それゆえスタートアップ企業の育成環境においては現実的な対応が求められており、エコシステムとして分業と協業を行っていかなければならない。

プレモパートナーは、スタートアップ企業を継続的に育成するため、その発展段階に応じて適切な支援を提供し、開発段階ごとに適切な関係者と積極的に連携でき、必要なリソースを提供する。

同社の桜井公美CEOは、「工学・医学・ビジネスという3要素が、間断なく実装化される仕組みが必要なのです」と力説する。プレモパートナーは、日本の実情に即した伴走・協調型インキュベーターなのである。

日本でベンチャー企業を育成し、“日本発”の医療機器を確実に生み出すことで、医療分野のイノベーションを加速させることが、プレモパートナーの役割だと認識している。

図表 プレモパートナーがめざす伴走・協調型インキュベーション

なお、本件に関するお問合せは下記連絡先まで。
secretariat.medtechangels@premopartners.com

*プレモパートナー株式会社:
医療機器開発のインキュベーターとして2019年に設立。社名のプレモはラテン語の「寄り添う」の意。
2021年から、Medtech Angelsを開催するなどし、多くのスタートアップ企業を支援している。
https://www.premopartners.com/
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