バングラデシュ:ミャンマーから逃れたロヒンギャ難民が増加──キャンプでの支援の拡充が急務
国境なき医師団
過密したキャンプで生活するロヒンギャ難民=2024年11月1日 (C) Yunus Ali Shamrat/MSF
ミャンマーでロヒンギャの人びとへの暴力が激化し、7月から現在までの間に数千人がバングラデシュへ逃れた。避難の途中でミャンマーに送還される人や、身柄を拘束される人も後を絶たない。
避難先のバングラデシュのキャンプでは過密状態が続き、水・電気などの生活インフラの不足や、メンタルヘルスへの影響が深刻だ。国境なき医師団(MSF)は当局に対し、全てのロヒンギャ難民が人道援助を今すぐ制約なく受けられるよう、迅速に対応することを求めている。
ロヒンギャとは?
仏教徒の多いミャンマーの主に西部ラカイン州で、何世紀にもわたり暮らしてきたイスラム系少数民族。1982年、国籍法の改正にともないロヒンギャは市民権をはく奪され、無国籍となった。2017年8月には、ラカイン州でミャンマー国軍によるロヒンギャに対する掃討作戦が始まり、およそ77万人が隣国バングラデシュ、コックスバザールへ避難。7年たったいまも、100万人以上が難民キャンプに暮らし、数十万人がマレーシア、インド、パキスタンなどの国々に無国籍のまま離散している。
新たな難民の栄養失調が深刻に
家族が目の前で死んでいくのを見た、残された財産を売らなければならなかった、危険な旅の費用のため多額の借金を強いられた──。バングラデシュにたどり着いた人びとは、経験した恐怖をMSFに語っている。国境を越えても安全な場所を探すのに何日もかかったと話す人もいる。
コックスバザールの難民キャンプでは、食料の確保が大きな課題となっている。新たに到着した人びとはテントや水を利用することができず、すでにキャンプに住んでいた人が新たに到着した人と食料配給や居住スペースを分け合っているという。虐待や搾取、ネグレクトからの保護も十分になされておらず、特に少女、少年、女性が影響を受けている。
7月以降、MSFは、中等度・重度の栄養失調に陥った5歳未満児の増加を確認した。ミャンマーでは、食料と医療を得ることが非常に難しいため、新たに到着した人びとはとりわけ栄養失調になりやすい。人道援助への資金不足が続いていることも、新たなロヒンギャ難民に人道援助が届かない要因となっている。MSFは、重病を抱えた人や銃撃で負傷した人など、新たに到着したロヒンギャ難民の治療に当たっている。
難民キャンプでMSFが運営する診療所に向かう患者=2024年5月27日 (C) Mohammad Sazzad Hossain/MSF
暴力が生む心の傷
バングラデシュでMSFの代表を務めるオーラ・マーフィーは、「人びとは、搾取やミャンマーへの送還を恐れて支援を求めることをためらっていると言います。とりわけMSFの心のケアチームは、人びとが故郷で目撃した暴力の記憶と闘っていることや、支援の少なさから先行きに不安を覚え、心の傷がさらに悪くなる様子を目の当たりにしています。新たに到着したロヒンギャの人びとには、ストレスや不安、うつの症状が見られます」と話す。
ロヒンギャ難民のソリムさん(※)(21歳)はこう語った。
「ミャンマーから激しい戦闘の音が今も聞こえるので、暴力の記憶が絶えずよみがえるのです。キャンプ内でもみな緊張していて、また暴力を振るわれるのではないかという恐怖におびえています。ミャンマーからの暴力からは逃れましたが、恐怖からは逃れられません。大きな音がするたびに心臓がドキドキするんです」
ソリムさんは7月にバングラデシュに着いたが、旅によるけがと強い精神的苦痛を抱えていた。
全てのロヒンギャ難民が人道援助を受けられるように
バングラデシュ当局はキャンプにいるロヒンギャ難民の緊急ニーズに対応することを約束したが、さらなる対応が今すぐ必要だ。MSFは、バングラデシュにいる全てのロヒンギャ難民が人道援助、医療、保護を制約なく受けられるよう求める。また、全ての関係当局に対し、国際法に従い、迫害や拷問などの人権侵害が深刻な国に誰一人たりとも強制送還しないよう要請する。
※プライバシー保護のため、仮名を使用しています。
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過密したキャンプで生活するロヒンギャ難民=2024年11月1日 (C) Yunus Ali Shamrat/MSF
ミャンマーでロヒンギャの人びとへの暴力が激化し、7月から現在までの間に数千人がバングラデシュへ逃れた。避難の途中でミャンマーに送還される人や、身柄を拘束される人も後を絶たない。
避難先のバングラデシュのキャンプでは過密状態が続き、水・電気などの生活インフラの不足や、メンタルヘルスへの影響が深刻だ。国境なき医師団(MSF)は当局に対し、全てのロヒンギャ難民が人道援助を今すぐ制約なく受けられるよう、迅速に対応することを求めている。
ロヒンギャとは?
仏教徒の多いミャンマーの主に西部ラカイン州で、何世紀にもわたり暮らしてきたイスラム系少数民族。1982年、国籍法の改正にともないロヒンギャは市民権をはく奪され、無国籍となった。2017年8月には、ラカイン州でミャンマー国軍によるロヒンギャに対する掃討作戦が始まり、およそ77万人が隣国バングラデシュ、コックスバザールへ避難。7年たったいまも、100万人以上が難民キャンプに暮らし、数十万人がマレーシア、インド、パキスタンなどの国々に無国籍のまま離散している。
新たな難民の栄養失調が深刻に
家族が目の前で死んでいくのを見た、残された財産を売らなければならなかった、危険な旅の費用のため多額の借金を強いられた──。バングラデシュにたどり着いた人びとは、経験した恐怖をMSFに語っている。国境を越えても安全な場所を探すのに何日もかかったと話す人もいる。
コックスバザールの難民キャンプでは、食料の確保が大きな課題となっている。新たに到着した人びとはテントや水を利用することができず、すでにキャンプに住んでいた人が新たに到着した人と食料配給や居住スペースを分け合っているという。虐待や搾取、ネグレクトからの保護も十分になされておらず、特に少女、少年、女性が影響を受けている。
7月以降、MSFは、中等度・重度の栄養失調に陥った5歳未満児の増加を確認した。ミャンマーでは、食料と医療を得ることが非常に難しいため、新たに到着した人びとはとりわけ栄養失調になりやすい。人道援助への資金不足が続いていることも、新たなロヒンギャ難民に人道援助が届かない要因となっている。MSFは、重病を抱えた人や銃撃で負傷した人など、新たに到着したロヒンギャ難民の治療に当たっている。
難民キャンプでMSFが運営する診療所に向かう患者=2024年5月27日 (C) Mohammad Sazzad Hossain/MSF
暴力が生む心の傷
バングラデシュでMSFの代表を務めるオーラ・マーフィーは、「人びとは、搾取やミャンマーへの送還を恐れて支援を求めることをためらっていると言います。とりわけMSFの心のケアチームは、人びとが故郷で目撃した暴力の記憶と闘っていることや、支援の少なさから先行きに不安を覚え、心の傷がさらに悪くなる様子を目の当たりにしています。新たに到着したロヒンギャの人びとには、ストレスや不安、うつの症状が見られます」と話す。
ロヒンギャ難民のソリムさん(※)(21歳)はこう語った。
「ミャンマーから激しい戦闘の音が今も聞こえるので、暴力の記憶が絶えずよみがえるのです。キャンプ内でもみな緊張していて、また暴力を振るわれるのではないかという恐怖におびえています。ミャンマーからの暴力からは逃れましたが、恐怖からは逃れられません。大きな音がするたびに心臓がドキドキするんです」
ソリムさんは7月にバングラデシュに着いたが、旅によるけがと強い精神的苦痛を抱えていた。
全てのロヒンギャ難民が人道援助を受けられるように
バングラデシュ当局はキャンプにいるロヒンギャ難民の緊急ニーズに対応することを約束したが、さらなる対応が今すぐ必要だ。MSFは、バングラデシュにいる全てのロヒンギャ難民が人道援助、医療、保護を制約なく受けられるよう求める。また、全ての関係当局に対し、国際法に従い、迫害や拷問などの人権侵害が深刻な国に誰一人たりとも強制送還しないよう要請する。
※プライバシー保護のため、仮名を使用しています。
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(2024/11/22 17:26)
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