創業100周年を迎える老舗石鹸メーカーがつくる、クラフトシャンプー「12/JU-NI」の開発ストーリー。SNSでの反響と異例のヒットの裏側


木村石鹸工業株式会社は1924年に木村熊治郎が創業し、現在の木村祥一郎で4代目の会社です。

来年度で創業100周年を迎える今も、国内では数社程度しか行っていない職人による”釡焚き”製法で石鹸を製造する大阪府八尾市の町工場です。

今回のストーリーでは、釜焚き製法の石鹸は使用していませんが、手作業の多い釜焚きに向き合ってきた木村石鹸だからこそ作れるクラフトシャンプー「12/JU-NI(ジュー二)」の開発秘話や、本気でいいものを作りユーザーを一番に考えたからこそのSNSでの反響と異例のヒットについて、開発担当の多胡と、ブランド担当の鹿嶋の言葉とともにお伝えします。

非効率な釜焚き製法を今もなお続ける理由とは

木村石鹸は、歴史ある「釜焚き」により石鹸の製造を行っています。釜焚きの製造は、油脂の種類や季節などのさまざまな状況によって微妙な変化があるため、毎度同じように製造することができません。この製造方法は、職人がほぼ張り付きで経験と勘を頼りに作る「非効率」なものです。釜焚きに対して鹿嶋は「今は釜焚きをやめてしまった会社さんが多いんです。その理由として、職人さんの五感が必要で手間がかかるということもあるんですけど、やはり海外から原料を仕入れたほうが安いという効率の面が大きい。」「日本が経済発展を遂げていくうえで、失われていった技術という側面があるのではないか」と述べています。


現在は流通も盛んになり、海外から石鹸の原料を購入したほうが早いし安い。しかしながら、こうして釜焚き製法で石鹸づくりを行うことによって、石鹸の特徴を理解したうえで適切な洗浄力や保湿効果などを追求し、上質な使い心地を実現できるといいます。

ものづくりに誠実に向き合うからこそ誕生したクラフトシャンプー「12/JU-NI」

2019年、makuakeで発表された「12/JU-NI」は、開発者の多胡が5年の歳月をかけて作ったライフワークプロダクトです。12/JU-NIについて多胡は「ブリーチによって髪を金髪にしているようなハイダメージヘアの方々が使用しても、仕上がりのいいシャンプーを作ろうと思いました。洗い上がり・洗い流し・乾燥後すべての段階できしまない、だんだん良くなっていく、なおかつ価格的にも良心的で、売り手も掛け値なしに胸を張れるような理想の製品を追求しました」と語ってくれました。


多胡は、木村石鹸に入社するまでは何社かのメーカー勤務を経験していたそうです。前職時代から「お客様にとって、良心的な商品、本物の商品が作りたい」と願っていましたが、叶いませんでした。しかしながら、木村石鹸では理想のシャンプーを作ることができた。それは、職人の存在が大きかったといいます。「私が作った処方はややこしいうえに作りにくく、別の会社で処方を製造さんに持っていくと嫌がられることが多くありました。しかし、木村石鹸では製造担当者さんが積極的に取り組んで問題なく製造してくれました」「12/JU-NIは、少しでも計量や温度などに誤差があった際は不安定化することが結構あったりします。適切なタイミングで温度を調節したり、季節による微調整も必要なので目視も必要になります。」


12/JU-NIには石鹸は使われていないものの、歴史ある釜焚き製法を続けてきたからこそ生まれた、まさに開発者と職人の技術と信頼関係がうむ手の込んだ”クラフトシャンプー”なのです。


「12/JU-NIはいいシャンプーだが、特殊なシャンプーではない」

12/JU-NIは、小さな会社ながら年間売り上げ約3億円を突破しているブランドです。開発者の多胡に12/JU-NIシャンプーと他社商品との違いについて尋ねると「実は、いいシャンプーなんですけど、特別というか、特殊なシャンプーじゃないと私は思っているんです。アミノ酸系界面活性剤と、コラーゲンなどペプチド系原料を使ったシャンプー・コンディショナーの最適解というか、指通りなどを追求して、良いシャンプーを目指して色んな人が試行錯誤したらこんな感じに近づくんじゃないかというような」と答えます。真面目に、良心的なものを追求すれば自分の他にも作れる開発者はいるのではないかと言うのです。


そんな12/JU-NIですが、SNSでご紹介すると、リプライがやまず、毎日のように応援の言葉や質問が届くようになりました。当時からTwitter(現X)の担当をしていた鹿嶋は、そのすべてに目を通し返信し続けています。鹿嶋は「DMやリプライとかはできるだけ全部ちゃんと返すということはモットーにやっていました。直接リプライをかえす会社って珍しいじゃないですか。これは海外のD2Cとかに倣ってやったところがあるんですけど、海外の化粧品ブランドはユーザーとの距離が近い。日本ではあまりそういう化粧品会社がなかったんですけど、ただのSNS広告ではなく色んなコミュニケーションが生まれる場所として考えてます。ユーザーのみなさまの声を直接聞けることは、その後の商品企画でもとても大きな力になっています。SNSの活用法を見つけたという感じです。」と語ります。「普通のことを真面目に、やれることを全部やっているだけで、飛び道具的な面白いことをやっているわけではないんです。」


ユーザー目線にたった結果12/JU-NIのような商品が誕生したのです。

今後の12/JU-NIのブランドミッションとは

 

12/JU-NIシリーズは発表されてから、12月で4周年を迎えます。今後の12/JU-NIブランドについて「髪の毛に悩んでいらっしゃる方が、一度使って、また戻ってきてくれる、そういうことがうれしい」と多胡は語ってくれました。加えて、鹿嶋は「価格的にも頑張っていて、この価格でこれ以上のものはないと自負しているので、日常に溶け込むホームケアとして、お守りのような存在になりたい」「髪とうまく付き合えるようになって、自分の髪がもっと好きになったという声が一番うれしい」と伝えてくれました。


ヘアケアは特別なものではなく、毎日使うものだからこそ、たとえ非効率でも人の手を介し、丁寧に作り上げ、これからも心地良い存在感でユーザーのそばに寄り添えるプロダクトでありたいと願うばかりです。


≪木村石鹸工業株式会社について≫

1924年に木村熊治郎によって創業。現在の木村祥一郎で4代目。

2024年で100周年を迎える今も、職人による”釡焚き”製法を守る大阪府八尾市の町工場。

心から良いと思えるものを追求するものづくりの姿勢と、長年にわたり培った技術で、人と環境の調和の取れた製品作りを行っています。

会社HP> https://www.kimurasoap.co.jp/








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