10万人の医療ビッグデータを活用した日本初となる大規模なCOPD疫学研究を実施
クラシエ薬品株式会社
気流閉塞有症者のうち、COPD診断率はわずか8.4%と極めて低い結果に/COPDの認知向上と健診データの活用に課題
漢方薬を中心とした一般用医薬品と医療用医薬品を販売するクラシエ薬品株式会社は、株式会社JMDC、福島県立医科大学 医学部 呼吸器内科学講座 主任教授 柴田陽光氏、昭和大学 医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー内科学部門 主任教授 相良博典氏と共同で、全国約10万人の医療ビッグデータを活用した、日本初の大規模なCOPD(慢性閉塞性肺疾患)疫学研究を実施しました。本研究成果はCOPDを対象とした国際ジャーナル『International Journal of Chronic Obstructive Pulmonary Disease』に、2024年5月7日に掲載されました。
COPDは、主に長年の喫煙習慣などのために肺に炎症が起きる病気です。肺に炎症が起きると空気の通り道である気道や気管支が狭くなったり、気管支の先の肺胞が壊されたりして、呼吸機能が低下していきます。COPDの症状は、初期症状の咳や痰から、ゆっくり時間をかけて進行しますが、症状が進むと酸素吸入をしないと動けなくなるため、なるべく早い段階での適切な対応が重要になります。
本研究は、現在の日本における気流閉塞の有症率を再評価し、COPDの診断率を明らかにすることを目的に、福島県立医科大学の柴田教授と昭和大学の相良教授の協力のもと、株式会社JMDCが保有する全国約1000万人の医療データのうち、今回の研究対象となる呼吸機能検査データを有する全国約10万人の健康診断データやレセプトデータを用いて実施しました。
研究結果からは、気流閉塞の有症者のうち、COPDと診断されたのがわずか8.4%しかいないことが明らかになりました。これは、健康診断で気流閉塞が判明しても医療機関を受診せず、早期COPD診断に至っていない可能性を示しており、COPDにおいては健康診断の結果が十分に生かされていないという課題が浮き彫りになりました。この背景には、疾患に対する認知度の低さや、初期段階では症状が目立たないなどの要因が考えられ、今後、さらなる疾患啓発が求められる結果となりました。
クラシエ薬品では高齢者医療としての「COPD」や「フレイル」に対する基礎研究と臨床研究を進めています。早期診断・治療が重要となるCOPDにおいて、疾患の認知度の低さに加え、息苦しさや咳込みがあるにも関わらず未受診者が多いことから、当社でもCOPD患者の受診啓発活動に取り組んでおり、本研究がその一助になることを期待しています。また、5月31日は「世界禁煙デー」であることから、呼吸器内科医師を中心に、本疫学データの情報提供活動に努めて参ります。
■論文概要
タイトル:Underdiagnosis of COPD: the Japan COPD real-world data epidemiological(CORE)study
掲載誌:International Journal of Chronic Obstructive Pulmonary Disease
掲載日:2024年5月7日
著者:古賀由華1,出口さやか1,松尾岳志1,鈴木明徳1,寺島玄2,但馬匠2,柴田陽光3,相良博典4
1. クラシエ株式会社 薬品カンパニー 医薬事業部
2. 株式会社JMDC リアルワールドエビデンス事業部
3. 福島県立医科大学 医学部 呼吸器内科学講座
4. 昭和大学 医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー内科学部門
URL:https://doi.org/10.2147/COPD.S450270
<論文要旨>
【目的】
日本の気流閉塞の有症率は3.8%から16.9%であることが報告されている。今回、現在の日本における気流閉塞の有症率と慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)の診断率を明らかにすることを目的として、大規模データベースを用いた疫学研究を実施した。
【対象と方法】
株式会社JMDCが提供する健康保険組合由来のレセプトデータおよび健康診断データを用いた。対象は、2019年1月から2019年12月の1年間に健康診断の受診がある40歳以上で、呼吸機能検査値が測定されている集団とした。評価項目として、気流閉塞の有症率、COPD診断率、病期分類、呼吸機能検査値を調査した。
【結果】
対象者102,190人のうち、気流閉塞を有していたのは4,113人(4.0%)であった。気流閉塞の有症率は、男性5.3%、女性2.1%、現喫煙者6.8%、非喫煙者または元喫煙者3.4%であり、年齢では高齢になるほど有症率が高かった。気流閉塞者におけるCOPD診断率は8.4%であった。気流閉塞者をCOPD診断有無で分けたところ、COPD診断無群と比較してCOPD診断有群の方が病期の進行がみられ、FEV1/FVC およびFEV1は有意に低値であった(p <0.0001, Wilcoxon rank sum test)。
【結語】
大規模なデータベースを用いた疫学調査を行い気流閉塞の有症率とCOPD診断率を明らかにした。健康診断受診者においてもCOPD診断率が極めて低いことが示され、さらなる疾患啓発が求められる。また、COPDの早期発見および診断率向上にはプライマリケア医による本疾患疑いの患者の発見や、呼吸器専門医との連携も大切であると考える。
■株式会社JMDCについて
医療ビッグデータ業界のパイオニアとして2002年に設立。独自の匿名化処理技術とデータ分析集計技術を有しています。12億5,500万件以上のレセプトデータと6,200万件以上の健診データ(2024年3月時点)の分析に基づく保険者向け保健事業支援、医薬品の安全性評価や医療経済分析などの情報サービスを展開しています。また、健康度の単一指標(健康年齢)や健康増進を目的としたWebサービス(Pep Up)など、医療データと解析力で健康社会の実現に取り組んでいます。
URL:https://www.jmdc.co.jp/
■クラシエ薬品について
クラシエ薬品は漢方のプロフェッショナルとして、半世紀以上にわたり日本に暮らす人々の健康で豊かな暮らしをサポートしてきました。漢方薬を中心に一般用医薬品から医療用医薬品まで自社一貫体制の下で幅広く提供しています。
近年、健康の価値や暮らしのあり方が大きく変化している社会の状況を受けて、クラシエ薬品は漢方事業における医療用分野と一般用分野の連携を強め、「クラシエの漢方」として事業一体で漢方薬を通じた健康価値の提供を高めていくことに挑戦していきます。
漢方を通じて、日本に暮らす人々が自らの健康を総合的に見つめ、理想とする健康的な暮らしをつくることをサポートしていきます。
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気流閉塞有症者のうち、COPD診断率はわずか8.4%と極めて低い結果に/COPDの認知向上と健診データの活用に課題
漢方薬を中心とした一般用医薬品と医療用医薬品を販売するクラシエ薬品株式会社は、株式会社JMDC、福島県立医科大学 医学部 呼吸器内科学講座 主任教授 柴田陽光氏、昭和大学 医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー内科学部門 主任教授 相良博典氏と共同で、全国約10万人の医療ビッグデータを活用した、日本初の大規模なCOPD(慢性閉塞性肺疾患)疫学研究を実施しました。本研究成果はCOPDを対象とした国際ジャーナル『International Journal of Chronic Obstructive Pulmonary Disease』に、2024年5月7日に掲載されました。
COPDは、主に長年の喫煙習慣などのために肺に炎症が起きる病気です。肺に炎症が起きると空気の通り道である気道や気管支が狭くなったり、気管支の先の肺胞が壊されたりして、呼吸機能が低下していきます。COPDの症状は、初期症状の咳や痰から、ゆっくり時間をかけて進行しますが、症状が進むと酸素吸入をしないと動けなくなるため、なるべく早い段階での適切な対応が重要になります。
本研究は、現在の日本における気流閉塞の有症率を再評価し、COPDの診断率を明らかにすることを目的に、福島県立医科大学の柴田教授と昭和大学の相良教授の協力のもと、株式会社JMDCが保有する全国約1000万人の医療データのうち、今回の研究対象となる呼吸機能検査データを有する全国約10万人の健康診断データやレセプトデータを用いて実施しました。
研究結果からは、気流閉塞の有症者のうち、COPDと診断されたのがわずか8.4%しかいないことが明らかになりました。これは、健康診断で気流閉塞が判明しても医療機関を受診せず、早期COPD診断に至っていない可能性を示しており、COPDにおいては健康診断の結果が十分に生かされていないという課題が浮き彫りになりました。この背景には、疾患に対する認知度の低さや、初期段階では症状が目立たないなどの要因が考えられ、今後、さらなる疾患啓発が求められる結果となりました。
クラシエ薬品では高齢者医療としての「COPD」や「フレイル」に対する基礎研究と臨床研究を進めています。早期診断・治療が重要となるCOPDにおいて、疾患の認知度の低さに加え、息苦しさや咳込みがあるにも関わらず未受診者が多いことから、当社でもCOPD患者の受診啓発活動に取り組んでおり、本研究がその一助になることを期待しています。また、5月31日は「世界禁煙デー」であることから、呼吸器内科医師を中心に、本疫学データの情報提供活動に努めて参ります。
■論文概要
タイトル:Underdiagnosis of COPD: the Japan COPD real-world data epidemiological(CORE)study
掲載誌:International Journal of Chronic Obstructive Pulmonary Disease
掲載日:2024年5月7日
著者:古賀由華1,出口さやか1,松尾岳志1,鈴木明徳1,寺島玄2,但馬匠2,柴田陽光3,相良博典4
1. クラシエ株式会社 薬品カンパニー 医薬事業部
2. 株式会社JMDC リアルワールドエビデンス事業部
3. 福島県立医科大学 医学部 呼吸器内科学講座
4. 昭和大学 医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー内科学部門
URL:https://doi.org/10.2147/COPD.S450270
<論文要旨>
【目的】
日本の気流閉塞の有症率は3.8%から16.9%であることが報告されている。今回、現在の日本における気流閉塞の有症率と慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)の診断率を明らかにすることを目的として、大規模データベースを用いた疫学研究を実施した。
【対象と方法】
株式会社JMDCが提供する健康保険組合由来のレセプトデータおよび健康診断データを用いた。対象は、2019年1月から2019年12月の1年間に健康診断の受診がある40歳以上で、呼吸機能検査値が測定されている集団とした。評価項目として、気流閉塞の有症率、COPD診断率、病期分類、呼吸機能検査値を調査した。
【結果】
対象者102,190人のうち、気流閉塞を有していたのは4,113人(4.0%)であった。気流閉塞の有症率は、男性5.3%、女性2.1%、現喫煙者6.8%、非喫煙者または元喫煙者3.4%であり、年齢では高齢になるほど有症率が高かった。気流閉塞者におけるCOPD診断率は8.4%であった。気流閉塞者をCOPD診断有無で分けたところ、COPD診断無群と比較してCOPD診断有群の方が病期の進行がみられ、FEV1/FVC およびFEV1は有意に低値であった(p <0.0001, Wilcoxon rank sum test)。
【結語】
大規模なデータベースを用いた疫学調査を行い気流閉塞の有症率とCOPD診断率を明らかにした。健康診断受診者においてもCOPD診断率が極めて低いことが示され、さらなる疾患啓発が求められる。また、COPDの早期発見および診断率向上にはプライマリケア医による本疾患疑いの患者の発見や、呼吸器専門医との連携も大切であると考える。
■株式会社JMDCについて
医療ビッグデータ業界のパイオニアとして2002年に設立。独自の匿名化処理技術とデータ分析集計技術を有しています。12億5,500万件以上のレセプトデータと6,200万件以上の健診データ(2024年3月時点)の分析に基づく保険者向け保健事業支援、医薬品の安全性評価や医療経済分析などの情報サービスを展開しています。また、健康度の単一指標(健康年齢)や健康増進を目的としたWebサービス(Pep Up)など、医療データと解析力で健康社会の実現に取り組んでいます。
URL:https://www.jmdc.co.jp/
■クラシエ薬品について
クラシエ薬品は漢方のプロフェッショナルとして、半世紀以上にわたり日本に暮らす人々の健康で豊かな暮らしをサポートしてきました。漢方薬を中心に一般用医薬品から医療用医薬品まで自社一貫体制の下で幅広く提供しています。
近年、健康の価値や暮らしのあり方が大きく変化している社会の状況を受けて、クラシエ薬品は漢方事業における医療用分野と一般用分野の連携を強め、「クラシエの漢方」として事業一体で漢方薬を通じた健康価値の提供を高めていくことに挑戦していきます。
漢方を通じて、日本に暮らす人々が自らの健康を総合的に見つめ、理想とする健康的な暮らしをつくることをサポートしていきます。
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(2024/05/15 13:00)
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