足の爪トラブル、ロコモの一因に
~姿勢制御や歩行に支障~
足の爪の手入れに気を配っているだろうか。足の爪は立っているときや歩行時のバランスに影響を及ぼし、良好な状態に保たれていないと移動能力の低下、すなわちロコモティブシンドロームの要因になりかねない。ひいては転倒・骨折して要介護に陥る恐れもあり、専門家は適切なケアを促す。

歩行能力を維持するため、足の爪にも注意を払いたい(イメージ画像)
◇専門家「小さな運動器」
「爪は『小さな運動器』と呼べるのではないか。大切にしてほしい」。埼玉県済生会川口総合病院の高山かおる皮膚科主任部長はこう力説する。人間は地面に接する足で自らの体重を支え、足を交互に前に出すことによって違う場所に移動する。高山医師によると、足の爪には指先の皮膚を保護するほか、指先の感覚を鋭敏にしたり、歩行の際に足にかかる力を受け止めて体のバランスを取ったりする役割がある。爪に問題があると、歩行に支障が出やすい。
高齢者の転倒が多いのは、足腰の衰えや反応速度の低下などが原因で、転びそうなときに踏ん張りが利かず、態勢を立て直すことが難しくなる。姿勢の制御には足の指をぎゅっと握る力が、その力には爪の状態が関係しており、「しっかりした爪があれば指で地面をしっかり捉えることができ、体のぐらつきやぶれを抑えられる」(高山医師)という。

セミナーで足の爪の重要性について話す高山かおる氏=2025年3月、都内
◇水虫なら転倒リスク1.9倍
このように重要な役割がある足の爪だが、何らかのトラブルを抱えている人は少なくない。典型的な例として、カビの一種である白癬(はくせん)菌が原因の水虫が挙げられる。日本臨床皮膚科医会が2023年に実施した大規模調査では、日本人の13人に1人が爪白癬(爪水虫)を患い、足の水虫と合わせると感染者は6人に1人に上る。高山医師は高齢者に関し「爪が白癬によって肥厚したり変形したりすると、過去1年間に転倒しているリスクが1.94倍に上がるとの論文がある。親指の肥厚・変形は下肢機能低下をもたらすとの検証データもあり、いかに親指の爪が大事かを示している」と話す。
骨がもろい高齢者の場合、転倒で脚などを骨折しがちだ。治るまでしばらく歩けないと、筋力が急激に衰え得る。その結果、寝たきりになるケースも珍しくなく、厚生労働省の調査では、介護が必要になった原因の3位に骨折・転倒が入っている。
- 1
- 2
(2025/05/07 05:00)