特集

周囲が悪化させる認知症の感情症状
本人の尊厳尊重を

 認知症は「負け組」ではない

 政府の認知症施策推進大綱は「共生」と「予防」をうたう。当初は予防の目標値を入れる予定だったが、強い反発を招いた。繁田教授は共生を重視し、予防という概念だけが先行することに懸念を示す。

 「認知症になった人は『負け組』なのか。認知症の患者は500万人以上といわれ、さらに400~500万人が認知症の予備軍とされる。そういう人たちを負け組と呼んでよいのだろうか」

 「認知症になったとしても、その人らしく生きていける。普通の病気だとして、社会が受け止めるのが共生だ。医療や福祉の専門職も、患者にいろいろな生き方があることを伝える必要がある」

東京慈恵会医科大学の繁田雅弘教授

東京慈恵会医科大学の繁田雅弘教授

 ◇課題は薬の効果試験

 繁田教授のメモリークリニックを受診する患者の半数は、一人で訪れるという。認知症の啓発が進み、病気に対する理解が深まったことも背景にあるようだ。

 「関係者は、病気の進行を遅らせる服薬の意義を本人とともに考えてほしい」と繁田教授は勧める。「家族に迷惑をかけたくない」「これ以上、症状を進行させたくない」などとして、ほとんどの患者が服用に同意するという。

 ただ、課題もある。処方した薬の効果があったかどうかの評価だ。効果がないと分かれば、薬を変えて試すことができる。薬の効き目を評価する世界標準のテストはあるが、実施するのに30~40分かかる。地域のかかりつけ医や医療機関が行うには、難しい面もあるという。定期的に専門的な病院で、薬の効果を調べてもらう必要がある。

 ◇家族の相談に乗るカフェ

 同病院は、認知症に関する対応を統括する「メモリーセンター」を開設している。外来機能と内科や外科などの入院患者に対する認知症のケアに加え、2019年度から相談と交流の役割を担う「マンスリーカフェ『花水木』」を始めた。既に2回開催。医師、専門看護師、薬剤師がチームを組んで患者の家族の相談に乗っている。一員である品川俊一郎医師(精神医学講座)は「どのようなニーズがあり、どうすれば家族にとってメリットになるのか、それを考えながら進めていきたい」と話している。(鈴木豊)

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