治療・予防

治療にてこずる長引く痛み
認知行動療法が有効

 痛みの原因となった外傷や病気が治った後も痛みが続くことがある。慢性の痛みの治療には、認知行動療法という選択肢がある。千葉大学医学部付属病院・認知行動療法センターの清水栄司教授は、「長引く痛みには不安やうつなども関係しているので、精神的なサポートが重要です」と指摘する。

 ▽不安や怒りは痛みを増幅

 けがをしたり手術を受けたりすると傷口が痛むが、これは急性痛といって、傷が治っていけば痛みも和らぐ。外傷や手術の傷が治っても痛みが3カ月以上続く場合が慢性痛だ。

慢性痛に認知行動療法という治療選択も

世界的にも、慢性痛を訴え医療機関を受診する人は患者全体の15~20%を占める。痛みが消えない原因ははっきりしないことも多く、痛む部位だけでなく、痛みを感じる脳の感受性や心理的な要因も関係していると考えられる。交通事故で負った傷が完治しても痛みが消えないのは、事故の衝撃が痛みの記憶として強烈に脳に焼き付いているせいかもしれない。

 痛みを意識し過ぎると痛みに敏感になり、それがかえって痛みを長引かせることにもつながる。また、不安や怒りを感じやすい人は、痛みに敏感になる傾向があるという。痛みを恐れて体を動かさないような生活が続くと、筋肉が衰えたり、不眠やうつ病になったりすることもある。不眠の悪化を防ぐために、清水教授は「就床しても眠れない状態が20分以上続いたら、我慢せずにいったん床から出て、眠くなったらまた横になるようにするといいでしょう」とアドバイスする。

 ▽臨床試験が進行中

 そんな慢性痛に対し、認知行動療法が効果的であることが分かってきた。認知行動療法は、認知(ものごとの受け止め方や考え方)や行動を変えることで、気持ちを楽にする心理療法の一種。慢性痛の治療法として、国内外で強く推奨されているという。

 実際の診療では、3~4カ月間にわたり痛みに伴うストレスや怒りの管理、痛みによる考え方や行動の見直し、睡眠や活動の管理などの指導を受ける。1クール12~16回で、毎週1回の治療時間は約50分。一対一で心理職(セラピスト)と話をする。ただし、医療保険は適用されず、同センターでは1回(約50分)につき1万円(税別)となる。

 現在、同センターでは、慢性痛と診断された18~75歳を対象に、慢性痛の認知行動療法の臨床試験を実施している(問い合わせのメールは、info―chibacbt@chiba―u.jp)。遠方でも参加しやすいようにインターネットのテレビ電話を使って治療を行っているという。

 清水教授は「治療中の痛みが3カ月過ぎても治らない場合は、かかりつけ医に認知行動療法について相談してみましょう。選択肢として、認知行動療法があることを知っておいてください」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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