足の悩み、一挙解決

巻き爪の治療がうまくいかないのは、なぜ?(足のクリニック表参道 山口健一医師) 【PART2】第3回

 【桑原靖院長】足のクリニックでは、足の爪だけを専門に診る医師も診察しています。彼は形成外科が専門ですが、自身が巻き爪で悩んだ経験から、爪の診療に力を注いできたそうです。7年前のある日、突然電話がかかってきて、2日後に来訪、「ぜひ、ここで勉強したい」というので、熱意を買って即採用しました。以来、毎週水曜日の診療を担当してもらっています。2016年5月には「爪と皮膚の診療所」というユニークな名称の診療所を横浜市青葉区にオープンしました。爪を専門に診るというマニアックなコンセプトながら、新患の予約が2カ月先まで埋まるほど患者さんの支持を集める診療所になっています。

 今回と次回は、その山口健一医師に巻き爪について語ってもらいます。

 ◇難しい巻き爪の治療

 【山口健一医師】インターネットで巻き爪を検索すると、びっくりするくらいたくさんの情報が出てきます。自分で矯正する方法もいろいろあり、診療所を受診される患者さんも、ここにたどりつくまでさまざまな方法を試して苦労されてきた方が多いです。

 巻き爪が治るというセルフケアグッズを使ってみたという人も多くいます。こういったものは一期一会なので、自分で使ってみて効果があれば、それでもいいと思います。ただ、日本人独特の考え方なのでしょうか。使うと痛いのに、「この痛みに耐え抜けば健康が手に入る」と信じて、我慢してしまう人もいます。最近では、巻き爪の上におきゅうをして、爪の下までやけどをしてくる人がいました。

 医療機関にかかっても、改善されない、入院して手術を受けたのに再発した、爪の形がおかしくなった、靴が原因と言われ、オーダーメードの靴を作ってもよくならない、など患者さんたちの苦労話を聞くにつけ、巻き爪診療の難しさを痛感します。

爪治療のフローチャート

爪治療のフローチャート

 ◇巻き爪と陥入爪を区別する

 巻き爪を治療する前に、まず知っておかなければならないのは、巻き爪と陥入爪の違いです。これを区別せずに、巻いている爪をどう治すかということだけに力点を置いてしまったために、治療がうまくいかないケースが非常に多いと感じます。巻き爪は爪が巻いている状態、陥入爪は爪の脇に食い込んで痛い傷ができている状態です。

 巻き爪の中には、見た目ではものすごく巻いているのに、まったく痛みがないものもあります。巻き爪が痛いのを治したいのか、見た目が格好悪いから治したいのかを、はっきり区別する必要があります。

 爪の状態は大きく四つに分類できます。爪が巻いていなくて痛みもない、これが正常です。巻いているけれども痛みがない、このパターンの人も大勢います。巻いていないけれども爪が食い込んで痛みがあるのが陥入爪、巻いていてなおかつ痛いのは巻き爪と陥入爪が合併したケースです。

 治療方法はそれを見極めて決めなければいけません。おおざっぱにいうと、巻き爪は矯正が向いていますが、爪が巻いていないのに食い込んで痛い陥入爪は、そもそも巻き爪ではないので矯正しても意味がありません。この場合は手術が適しています。それを逆にしてしまい、爪が平らなのに矯正を続けたり、痛くもないのに巻いているからと手術をしたりしてしまう人が非常に多いのです。

 ◇爪はなぜ巻くのか

 そもそも、足の爪はなぜ巻いてくるのでしょう。爪の切り方、靴の選び方などいろいろ言われてはいますが、原因を考えないまま治療をしても、解決にはなりません。

 先に紹介した四つのパターンが移行するときの原因についてみていきましょう。

 1)正常だった爪が陥入爪になる
 巻いていない爪でも、登山やスポーツなどで長時間、足の親指に強い力がかかると、爪が脇の皮膚を刺激して傷になってしまう場合があります。足の骨格がくずれているため、親指がまっすぐ下に踏めず、斜めになることで、傷を作りやすくなる場合もあります。

 2)正常だった爪が巻き爪になる

 正常だった爪が巻き爪になる主な原因は、足の骨格の異常です。扁平(へんぺい)足、外反母趾(ぼし)、ハイアーチなどの問題が先にあって、足の指が地面に対してまっすぐに踏めていないため、爪が巻いてきてしまいます。老人ホームなどで長期間寝たきり状態の人や車いすで生活している人に、巻き爪が多いことからも、下からの圧力がかからないことが巻き爪の原因になることがわかります。

 3)痛くない巻き爪が、陥入爪になって痛い

 「巻き爪なので深爪をしないよう伸ばしてください」と指導され、伸ばしすぎて分厚くなってしまう人がいます。その爪が靴に当たるようになり、登山やスポーツなどでつま先に負担がかかったのをきっかけに、爪の脇が食い込み、陥入爪になってしまうというケースがけっこうあります。

 また、巻いた爪は切るのが難しいため、爪の端が中途半端に残ってしまい、それが爪の脇に傷をつくってしまう場合もあります。

 このように、爪が巻いてくる主な原因は、足の骨格の異常で、そこに爪の切り方や生活習慣など、複合的な要因が絡み合って、痛みをもたらします。

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