子どもの虫歯が明かす貧困や虐待=検診受け、支援制度の積極活用を
子どもの虫歯は減少傾向にあり、現在の5歳児の約半数は乳歯に虫歯が全く無い。その一方で、極端に虫歯が多い子どもがいる。「乳歯の全てが虫歯という重症なケースもあります。その背景には貧困や虐待があることが珍しくありません」と、明海大学歯学部(埼玉県坂戸市)形態機能成育学講座口腔(こうくう)小児科学分野の渡部茂教授は語る。
◇虫歯が極端に多い
食事をすると口の中は酸性になり、歯のミネラルが溶け出す「脱灰(だっかい)」が起きる。このままだと虫歯になってしまうが、そこへ唾液が大量に分泌されることで口の中がアルカリ性に転じ、今度は溶けたミネラルが再び歯に取り込まれる再石灰化が起きる。私たちの歯はこのメカニズムによって守られている。
「約40年前、子どもたちの口の中は脱灰の一方通行で、『虫歯の洪水』と言われました。しかし虫歯は本来、正しい生活習慣で予防できるものです。最近、子どもの虫歯が激減したのは、口腔衛生の知識が保護者に浸透したことが大きな要因です」
それに伴い、まるで時代に取り残されたかのように虫歯が極端に多い子どもたちがいることが浮き彫りになった。「生活の中で防げるはずのものを防ぐことができない。そこには、そもそも普通の生活を送れていない実態があります。貧困や虐待といった社会の問題が虫歯という形で露出するようになったのです」と、渡部教授は指摘する。
(2017/08/17 10:52)