ヒポクラテスたちへDr.純子のメディカルサロン

「女性医師のキャリア形成」 橋本葉子・東京女子医大名誉教授

 海原 東京女子医大ではどのような形で女性医師のキャリア支援をしていますか。

 橋本 女子医大では復職や子育てしながらの学位取得をサポートセンターが支援する仕組みなどをつくりました。女子医大の卒業生だけではなく他大の卒業生にも開放していますから、お問い合わせください。情報発信もしているので、医療現場の課題や研究情報を自宅で把握することができます。また、医局によっては、短い時間しか働けない女性医師たちが何人か集まって一つの外来診療を受け持つシステムをつくり、現場勤務を続けられるような取り組みもしています。

 海原 それはいいですね。女性医師が多い女子医大だからできることかもしれません。先生ご自身は医師としてどのような生活をされてきたのでしょうか。

 橋本 私はずっと独身で東京の叔母の家から大学に通っていました。叔母には子どもがいなかったので、私が子ども代わりでした。仕事一筋で家のことは全くやらなかったです。夜10時前に家に帰ることは少なかったです。研究の方が楽しくて。私は、自分が好きなことをできたから幸せです。最初は父の後を継ぐつもりでしたが、基礎医学に進もうと思った時、父に話すと、「それはいいね」と言ってくれました。

 海原 最後に後輩の女性医師にメッセージをお願いします。

 橋本 どんな形であろうと医師としてできることはしてほしいと思います。医師としての技術を持ち、使えるということを大事にして、社会に貢献してほしい。途中いろいろな理由で中断せざるを得ないこともあるでしょうが、辞めないでほしいと思っております。


橋本葉子医師 略歴
東京女子医科大卒、57年慶応大医学部生理学教室助手、61年米オハイオ州立大視覚研究所へ留学、65年東京女子医科大第一生理学教室講師、71年米エール大眼科学教室へ留学、72年東京女子医科大第一生理学教室准教授、84年同教授、87年同主任教授(10年間)、94年東京女子医科大副学長、96年東京女子医科大・同看護短期大学長代行、97年東京女子医科大を定年退職、名誉教授に、2006年文部科学省戦略的研究拠点育成プログラム(スーパーCOE)東京女子医科大国際統合医科学インスティテュート(IREIIMS)顧問・特任教授。研究テーマは「網膜の情報処理に関する研究」。


【取材後記】あまりに順調なキャリアと、「(留学中に)大変だったという記憶がない」と言い切れる橋本先生にびっくりでした。先生が医師になられた時代は、男女雇用機会均等法などはなく、女性が働くこと自体が珍しかった頃です。まして「女性医師」という選択はごくごく少数派。「みんなと同じ」が安全で安心という意識が強い社会で、世間からあれこれ言われることもあったでしょう。しかし、それに煩わされない高い集中力が、研究に対する熱意の中で生まれたのだろうと想像しました。自分の進む道が明確でそれに突き進む。それは医師だけでなく、女性がキャリアを継続する上で大切なことなのだと確信しました。

(海原純子)
学生らに囲まれて(前から2列目、左から3番目が橋本医師)

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