Dr.純子のメディカルサロン

「働かせてやってる」企業には勤めるな 第10回

 スウェーデンのカロリンスカ医科大ストレス研究所のロバート・カラセク氏が提唱したジョブストレインモデルをご存じでしょうか。

 ストレスの度合いは、仕事の要求度や質・量自体が問題になるのではなく、要求度や質・量を自分がコントロールできる裁量があるかどうかのバランスによる、というものです。忙しい中でハイレベルの成果を要求されても、自分のペースで仕事を進める裁量権があれば能動的に仕事に取り組める。それならばストレスを乗り切れるわけです。

 一方で、忙しいのに上司から命令されて、「自分のペースで仕事をしたい」なんて言い出せない。これではストレスをため込みやすくなります。「働かせてやってる」という姿勢の企業では、従業員個人の事情などお構いなしに仕事を命じられることも多く、特に組織の下層に位置する若者には厳しい環境だと言えます。

 いま「健康経営」だなあと感じるのは、都心から離れたところに本社があって長年堅実経営をしている企業や、外資を入れて労働衛生に気を配っている企業などです。都心の一等地にある有名企業だけでなく、そうした企業にも目を向けて、自分らしい働き方を目指すのも選択肢かな、と思ったりします。

 「働いてくれてありがとう」という意識を持つ企業は、探せばちゃんとありますよ。そうした企業は、長時間労働を指摘されて産業医面談をするような従業員が驚くほど少ない。組織内のコミュニケーションも円滑に保たれ、風通しが比較的良好です。就職活動ではホワイト企業を見つける目安として、「働かせてやっている」という態度が面接官にあるのかどうかをまず点検してみてほしいです。

(文 海原純子)
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