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小児難病患者に統合的支援を―東大・笠井清登教授
AYA世代になり精神疾患、3障害重複のケースも


 ◇思春期に統合失調症のような症状も

 さらに、AYA世代に入ると新たにクローズアップされるのが、精神疾患リスクの問題だ。成長に伴って親子関係や社会との関係性をどう結び直し、自我を確立していくかが問われる時期であり、小児難病に限らず一般的にも、自殺や精神疾患の多い年頃だ。

 笠井教授によると、「22q11.2欠失症候群」の患者は思春期から急に、統合失調症のような症状を併発することがある。「幻聴や妄想などが現れる。これまでおとなしかった子が暴力を振るい始め、親が困ってしまうケースもある」という。

 「こうした患者に対しては、本人のニーズにあった心理社会的な支援が必要。また、副作用に十分配慮した上で、少量の抗精神病薬を処方すると比較的よくなることも多い」と笠井教授。だが、患者が精神科を受診しても、重い心臓病を抱えていることなどを理由に、「入院治療はできない」と断られ、家族が途方に暮れてしまうケースがあるという。

 精神疾患を発症すると、障害者福祉の支援の在り方にも変更が必要になってくる。だが、患者が精神疾患の治療を受けられない「難民」になると、ニーズに見合った福祉の支援を受けられないまま、家庭に引きこもることにもなりかねず、家族の負担はさらに大きくなる。

 東大病院は患者会のニーズを聞き取った上で2017年4月、「22q11.2欠失症候群メンタルヘルス専門外来」(22ハート専門外来)を開設した。精神神経科が中心となり、総合病院の強みを生かして小児科など他の診療科とも連携しながら、患者の治療に当たっている。これまでに10人ほどの患者を受け入れた。

 ガイドライン作成は、こうした経験を生かしながら、今年度から3年間をかけて取り組む。笠井教授は「大学病院に限らず通常の病院でも、患者が安心して治療を受け、多職種・多機関の支援とつながれるようにしたい」と指針の狙いの一つを話す。今後は、患者らのニーズ調査と支援モデル構築を進め、追跡調査を行った上で、20年度末に正式にガイドラインを策定する方針だ。(水口郁雄)

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