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小児難病患者に統合的支援を―東大・笠井清登教授
AYA世代になり精神疾患、3障害重複のケースも

 染色体に原因がある小児難病で、患者の大半が先天性の心臓病を抱え、知的な発達が遅れる、特有な顔つきがあるといった特徴を併せ持つ「22q11.2(にじゅうにきゅういちいちてんに)欠失症候群」。その患者が「AYA世代」と呼ばれる思春期・青年期を迎えると、さらに統合失調症のような症状の精神疾患を発症するケースのあることが分かってきた。医療的ケアが必要な患者は、ただでさえ通常の障害者福祉や教育の支援を受けづらいのに、精神疾患治療のハードルはさらに高い。成人期に移行していく患者と家族をどう支えるかが、課題として浮かんでいる。

 東京大学医学部付属病院の笠井清登教授(精神神経科長)は、同症候群を「身体」「知的」「精神」の三つの障害が併存する小児難病のモデルととらえ、医療、福祉、教育が連携して個々の患者に適切な統合的支援を行うためのガイドラインを作成する計画だ。

 ◇染色体起因の難病、4千~5千人に1人が発症

 2015年に国の指定難病になった「22q11.2欠失症候群」は一般的にはあまり知られていないが、4000~5000人に1人の割合で発症する。先天性心疾患の原因としては、ダウン症に次いで患者が多いとされる。

 2本ある22番染色体の一部が欠けているのが病気の原因で、病名もその部位に由来する。1991年に「FISH法」という新しい染色体解析技術が確立された結果、診断が進んだ。「両親の染色体は正常で、突然変異で欠けるケースがほとんど」と笠井教授は話す。

 欠けた部分には本来、30種類以上の遺伝子が存在する。欠失の結果、患者に現れる症状とその軽重はさまざまで、個人差も大きいが、患者の8割は生まれつき心臓病を抱えている。その代表的な例が、静脈血が全身に回ってしまい、体の酸素濃度が低くなるチアノーゼ性心疾患の一種「ファロー四徴症」。左右の心室を分ける仕切りの壁に大きな穴が開いている、全身へ血液を送る大動脈が左右の心室にまたがっている、などの四つの特徴を持つ心疾患だ。

 心臓病の治療の基本は手術になる。一般には、新生児期から個別の症例に即して手術計画が立てられ、患者の生命予後は改善している。だが一方で、こうした子どもたちが他の障害を併せ持つために、小児期から医療、福祉、教育の支援のはざまに置かれ、ニーズに見合った支援を受けにくいという問題点を、笠井教授は指摘する。

 例えば、「心疾患を抱え、階段の上り下りもしづらく、知的障害者を支援する枠組みに入っても、体力的に周囲に付いていけない」「知的障害があるため、さらなる進学を目指すのは難しいという理由で、病弱特別支援学校への入学も断られる」といった状況に置かれることもあるという。「まだ若い親の心理的、社会的負担は大きい」(笠井教授)のが実情だ。

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