ハヤミミDr.純子のメディカルサロン

第25回 ミスの指摘をストレスと感じるとき


 ◇怒りを感じたら…

 話し相手に与える印象は、言葉だけでなく、話すときの態度で変わる、という心理学の研究があります。いい話をするときは大声でもいいのですが、ミスの指摘をする場合、「怒りを感じたら、話し始めてはいけない」が鉄則です。

 上司にしてみれば、「またやった」「あれだけ慎重にと言ったのに」との思いから、かっとしがちです。しかし、まず息を大きく吐く。それから息を吸う。これを数回繰り返し、冷静さをキープしてください。息を大きく吐くことからスタートする深呼吸です。

 そして、指摘する内容を頭の中で整理し、「声を大きくしない、荒くしない」「早口にならない」と心に刻み込んでから、ミスを指摘します。部下が謝ったら、その時点でさっさと話をやめましょう。それ以上の深追いはしないことです。「もうミスはするな」などというプレッシャーや、教訓めいた言葉は不要です。

 逆に、本心は怒っているのに、いい上司を装い、不自然に寛容になることも不要です。冷静にきちんとミスを指摘したら、それで終了。

 「なぜミスをするんだ」「どうして、こういうことをするのか」。こうした疑問形で始まる指摘も禁物です。部下は答えに窮します。部下がこれに答えようとすると、「言い訳をするな」と言うことになり、さらに事態は悪化します。

 一方、もし上司から感情的な態度でミスを指摘されたら、部下はどうすればいいのでしょう。ミス自体は問題だが、それは自分の人格とは関係ない、ととらえ、自己肯定感をなくさないようにしよう、と心に刻むことが大事です。

 ◇自覚がない上司が危ない

 さて、こうした話を読んで、上司として「自分は大丈夫だろうか」と思う人は問題がないでしょう。自分を客観的にとらえようとする姿勢がある人は問題がないのです。「そんなことは分かり切っている」「自分はいつも冷静だ」「感情的に指摘をしたことなどない」と思っている、「自分は大丈夫」タイプの上司が最もリスクが高いのです。

 ちなみに、前述のメンタル不調が多発する部署の上司は「自分は部下に威圧感など与えるはずがない」と言っている人だということでした。もし、言う通りなら、これだけ多くの部下がメンタル不調を訴えることもないでしょう。

 上司は、自分の言動が部下にどれほど大きな影響を与えるか、に気付いていないことが多いのです。一方、部下にしてみれば、多くの場合、上司の言動は自分の将来や生活を左右します。上司の立場にある人たちには、部下の気持ちを想像しながら冷静に行うミスの指摘が、部下のやる気を引き出すポイントだということに気付いてほしいと思います。

(文 海原純子)

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