教えて!けいゆう先生
SNSを使って情報発信
医師として注意している三つのこと
読んだ患者さんが、「明らかに自分のことを言っている」と分かるほど具体的な投稿は、医療者の守秘義務に鑑みると、言うまでもなくやってはならないことです。しかしSNSでは時にこうした不用意な発信が目に留まり、複雑な心境になることがあります。
確かに、医学に関する抽象的な発信より、具体的な体験談を前面に出した方が、間違いなく分かりやすい啓発ができます。何かを多くの人に注意喚起したい時、実際にあった事例を紹介するほど有効な方法はありません。実際、日常であまり触れることのできない、こうしたSNS上での医師の体験談に救われる患者さんもいるでしょう。
一方で、あまりに具体的な記述だと、それを見た非医療者は「医療現場で知りえた情報を後でSNSで話のネタにする人がいる」と思うことで、医療不信につながるリスクがあります。
自分の声を多くの人に届けたいという、他の良識ある医師たちの信頼を毀損(きそん)する可能性もあります。なるべく具体的すぎる記述は避け、一部を改変し、投稿のタイミングに留意するなど、見る人の心理に配慮した投稿が大切だと思います。
◇可能な限り引用を示す
何か読み手の行動を変える可能性のある、医学に関する重要な発信をする時は、私は可能なかぎり引用を示すようにしています。SNSを始めた頃は、自分で文献に当たって正しさを確認できれば、投稿に引用まで書く必要はないと思っていました。
ところがSNSでは、たとえ発信者が医療関係の有資格者であっても、思い込みで断言された誤った情報が拡散することに気づきました。と同時に、医学に関する投稿をする際、引用元を必ず示すことを意識している医師たちもいる、ということにも気づきました。
Twitterでは特に文字数制限が厳しいため、全ての投稿に引用を記載するのは難しいものです。そこで私は、具体的に行動変容を促すような情報である時だけ、可能なかぎり引用元を書くようにしています。信頼性の低い情報との差別化、という意味でも、こうした意識は大切だと感じているのです。
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(2019/01/30 06:05)