治療・予防

再発繰り返す肝内結石症
胆管がんの合併も

 胆のうや胆管に結石ができる病気を胆石症といい、このうち肝臓内の胆管に結石ができるケースを肝内結石症と呼ぶ。胆石症の中で肝内結石症が占める割合は1.8%と少ないが、再発を繰り返しやすく難病指定されている。杏林大学医学部付属病院(東京都三鷹市)消化器・一般外科の鈴木裕講師は「肝内結石症は、結石の排除だけでなく、胆汁の流れを妨げる胆管狭窄(きょうさく)の治療や、合併症を見落とさないことが重要です」と注意を呼び掛ける。

人間ドックで見つかることも多い

 ▽人間ドックで発見も

 肝内結石症の症状で最も多いのは、腹痛と発熱黄疸(おうだん)の三つだ。腹痛は右上腹部やみぞおちに生じ、中には腰や背中が痛いと訴える人もいる。ところが、結石があるのに全く症状が出ない人もいるという。鈴木講師は「結石が小さく、胆汁の流れに影響がないためで、人間ドックの腹部超音波検査などで見つかるケースが少なくありません」と説明する。

 合併症で特に懸念されるのが肝内胆管がんだ。肝内結石症の1.3~5.9%に合併するといわれ、鈴木講師も「通常の画像診断では、結石ががんの発見を妨げるため、造影剤を使ったコンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)検査、腫瘍マーカーと呼ばれる血液検査を定期的に行い、がんの有無を入念に調べる必要があります」と強調する。

 肝内結石症は一般的な胆石症と違って若干男性に多く、発症年齢は平均64歳とやや高めだ。日本では患者が少ないが、世界的には東アジアに多い傾向があり、なぜ地域差があるのかは分かっていない。

 ▽内視鏡や開腹で治療

 肝内結石症の治療は、内視鏡によるものと、肝切除を主体とする開腹手術の二つが柱となる。約6割がビリルビンカルシウム結石という胆汁の色素成分とカルシウムが結合してできる結石のため、薬の服用で溶かすのは難しい。再発も多いことから、鈴木講師は「結石の除去だけでなく、胆汁が滞らないように、肝内胆管の狭窄や拡張部分の治療が必要です」と話す。

 現在は内視鏡治療が非常に発達しているため、合併症や肝臓の萎縮がなければ内視鏡による治療を行う。再発を繰り返す場合は、患者の希望も考慮して開腹手術を検討するという。

 肝内結石症は、早期発見と適切な治療が重要だが、専門の医療機関は多くない。鈴木講師は「診断されたら、治療方針を決定するために、必ず一度は専門医を受診してください」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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