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肺を覆う「胸膜」に発生する悪性胸膜中皮腫。天然の鉱物繊維で建材に使われるアスベスト(石綿)の吸入との密接な関連が知られ、建設労働者に発生するなど社会問題となっている。2018年8月にがん免疫療法薬が新たな治療薬として承認され、治療の選択肢が増えた。病気の特徴や治療法の進歩について、国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)呼吸器内科の後藤悌医師に聞いた。
悪性胸膜中皮腫の主な症状
▽長い期間かけて発生
悪性胸膜中皮腫はがんの一種で、男性に多く、せきや息切れ、胸痛などの症状が表れる。国内の疫学調査では、中皮腫(胸膜以外を含む)患者の約7割が建設現場や造船所内の作業など、アスベストが含まれる粉じんを意図せず吸い込む環境で働いていたとの報告がある。「悪性胸膜中皮腫は多くの場合、アスベストが主な原因で、胸膜の炎症が続くことで発生すると考えられます」と後藤医師。年間約1500人が中皮腫で死亡しており、1995年の約3倍に増えている。
悪性胸膜中皮腫はアスベストにさらされてから平均40年を経て発生する。すでに国内ではアスベストの輸入や製造は禁止されているが、現在でも既存の建築物の解体などでアスベストを吸い込む恐れがあり、今後もこの病気の発生が続くと危惧されている。
▽ニボルマブが使用可能に
治療には手術や薬物療法などがある。手術ができない場合、最初に2種類の抗がん剤を併用するのが標準的な治療法だ。しかし効果が得られなかったり、いずれ再発したりする。
そうした中、体に備わっている免疫の力を利用して腫瘍細胞を攻撃するがん免疫療法薬のニボルマブ(商品名・オプジーボ)が、18年8月から悪性胸膜中皮腫に使えるようになった。臨床試験でこの薬が投与された患者の約30%に腫瘍の縮小が認められた。後藤医師は「治療の選択肢が増えたことは意義があります。抗がん剤が効かないタイプの人にも効果が期待できます」と評価する。
ニボルマブの主な副作用は甲状腺機能障害、下痢、皮膚障害、倦怠(けんたい)感などで、これらに対処しつつ、治療を継続することが重要となる。後藤医師は「従来の抗がん剤とは異なる種類の副作用が、さまざまな時期に表れる可能があります」と注意を促す。
薬物療法のほかに遺伝子治療やウイルスを使う新しいがん治療法などの研究も進んでおり、今後も治療選択肢が増えると期待される。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/05/06 17:00)
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