胸痛 家庭の医学

 狭心症のときに起こる胸の症状は、前胸部を中心に重苦しい、締めつけられる、圧迫されるといった程度のものから、いまにも死ぬかと思うほど激しく痛むものまで、いろいろです。みぞおち、左肩から左腕、のどからあごのほうまでひびくことや、背中が痛むこともあります。狭心症には、階段や坂道、急ぎ足など、心臓に負担がかかる動作をしたときや、興奮したときなどに起こるものと、逆に夜間の睡眠中や早朝の安静にしているときに起こりやすいものがあります。ふつうは2~3分か、せいぜい5分ぐらいでおさまりますが、ときには20~30分と長く続くこともあります。軽い症状でもくり返し起こったり、強い痛みが続いたときは心筋梗塞のおそれもありますので、至急に専門医を受診することが必要です。
 似たような症状を起こす心臓の病気には、大動脈弁狭窄などの弁膜症や、心筋症、不整脈などがあります。ほかに、心臓神経症といわれる心臓は健全なのに似たような症状を起こす場合もあります。判断がむずかしいときは専門医を受診し、心電図や運動負荷試験などの精密検査を受けることをおすすめします。
 狭心症を診断するための検査はいろいろありますが、なによりも大切なのは、まず自分の症状をできるだけくわしく医師に伝えることです。狭心症が疑われたときに、医師が患者さんに確認したいおもな質問を下表にまとめました。病院を受診するときには、前もって自分の症状を整理しておくと、診断や治療を決めるときに役立ちます。
 必ずしも表の項目にあてはまらない場合、あるいは追加が必要な場合は、「その他」として具体的に記述するとよいでしょう。


●狭心症を診断するために大切な質問
1.どんな症状がありますか? (あてはまるものすべてに○印をつける)
・胸のしめつけられるような痛み ・圧迫されるような感じ ・やけるような感じ

・胸のチクチクした痛み ・胸から左肩にかけての痛み ・みぞおちの痛み

・のどのつまるような痛み ・あごから奥歯にかけての痛み

・冷や汗をかく ・気の遠くなる感じ

・その他(                  )
2.最初の症状はいつでしたか?
(    )年(   )月(   )日(   )時ころ
3.その症状は、以後どのような時間帯におこりますか?
・夜間睡眠中 ・早朝~床から離れる ・午前中 ・午後 ・夕方~床につくまで
4.症状は何をしているときにおこりますか?
  (あてはまるものすべてに○印をつける)
・階段をのぼる ・坂道を歩く ・急ぎ足 ・荷物を持った時 ・布団のあげおろし

・家事(そうじ、洗濯、炊事、その他) ・食事中 ・食後

・排尿や排便 ・入浴 ・洗面 ・寒かった時 ・会議中 ・宴会中 ・車の運転中

・たばこを吸った時 ・お酒を飲んだ時 ・疲れがたまった時 ・不眠が続いた時

・怒った時 ・おどろいた時 ・興奮した時 ・悲しかった時

・安静にしていて(睡眠中、夢をみて、テレビをみていて、話をしていて、その他)
5.症状はどれくらい続きますか?
・数秒 ・数十秒 ・1~2分 ・3~5分 ・10分 ・15分 ・20分 ・30分

・1時間くらい ・それ以上(   時間)




●すぐに専門医を受診する必要があるかを知るための追加質問
最近症状が起こりやすくなりましたか?
  ( はい ・ いいえ )
症状の起こる回数が多くなりましたか?
  ( はい ・ いいえ )
症状はどのくらいの頻度で起こりますか?
  月に(   )回  週に(   )回  ほぼ毎日  1日2回以上
最後に症状のあったのはいつですか?
  (   )月(   )日(   )時ころ
症状があるときに、冷や汗が出たり気の遠くなる感じがありますか?
  ( はい ・ いいえ )
これまでに心筋梗塞と診断されたことがありますか?
  なし ・ あり(    年   月)
現在どの程度の運動ができますか?
  ・何でもできる ・ほぼできる ・運動をすると苦しい ・ほとんどできない
ニトログリセリンを使用されている方は、効きにくくなりましたか?
 ( はい ・ いいえ ) 


 前胸部を中心に起こる痛みには、心臓病のほかに、大動脈の病気、肺の病気、食道や胃など消化器系の病気、神経・筋・骨格系の病気など、さまざまな病気が考えられます。これらのなかでも狭心症急性心筋梗塞、急性大動脈解離、肺塞栓症緊張性気胸などは手遅れになると致命的になる病気で、緊急の入院治療が必要です。

(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 循環器内科 住吉 徹哉)