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パーキンソン病は、脳内の神経伝達物質を作る神経細胞の減少により、体が動かしにくくなり、震えや硬直などの運動症状が起こる難病だ。日本では千人に1人程度の患者がいるという。早期治療が必要なため、いかに病気を早く見つけるかが重要になるが、近年、運動症状が出現する前に、匂いを感じにくくなる嗅覚障害が起こることが分かってきた。東京都健康長寿医療センター(板橋区)神経内科専門部長の仙石錬平医師は「早期発見のための、一つの手段になるはずです」と話す。
パーキンソン病と診断されるずっと前から、嗅覚障害を起こしていたのかも
▽8割が嗅覚障害
パーキンソン病は60~70代の発症が多く、高齢化が進む中、世界的に患者が増加している。最近の研究で、運動症状が出るずっと以前に、便秘やうつ、寝ている間に異常行動を起こすレム睡眠行動異常症などの非運動症状が表れることが分かってきた。嗅覚障害もその一つだ。仙石医師は「パーキンソン病患者に嗅覚テストを行うと、約8割に嗅覚障害が認められます。おそらく、パーキンソン病と診断される何年も前から症状があったと思われます」と話す。
脳の前頭葉の下には、嗅球(きゅうきゅう)と呼ばれる組織がへばりついていて、すぐ下にある鼻腔(びくう)内で受け取った匂いの情報を処理して脳に伝えている。パーキンソン病は、神経細胞内にあるαシヌクレインというタンパク質が異常化して蓄積するが、このαシヌクレインの蓄積が最初に起こるのが嗅球と延髄という部位だという。「嗅球にαシヌクレインがたまると匂いの情報がうまく伝えられず、嗅覚障害が起こります」と仙石医師。
▽MRIで嗅球を測定
パーキンソン病は早期に治療を始めると、薬がよく効くハネムーン期と呼ばれる期間を長く保つことができる。同センターでは、将来的なパーキンソン病発症を予測するため、原因が分からない嗅覚障害の患者に対し、磁気共鳴画像装置(MRI)を使って嗅球の体積を測定している。仙石医師は「パーキンソン病と同じような症状が出る進行性核上性麻痺(まひ)や大脳皮質基底核変性症では嗅球の萎縮が無いのに対し、パーキンソン病患者の嗅球は明らかに萎縮していることが分かっています」と説明する。
パーキンソン病は認知症に至るケースもあるため「原因不明の嗅覚障害に悩まされていたら、一度神経内科に相談してください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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